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アフラック創業者・最高顧問 大竹 美喜氏 スペシャルインタビュー

日本におけるがん保険の草分けであるアフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)の創業者である大竹さんは、現在、人材育成にも力を入れていらっしゃいます。特に近年では国際バカロレア(International Baccalaureate:IB)日本アドバイザリー委員会の委員として、世界で活躍できる人材を育成するべく尽力されています。金融機関.YOM15号では、今求められている「人間力」「グローバル人材」について、お話を伺いました。

聞き手:リッキービジネスソリューション(株) 代表取締役 澁谷 耕一

「人間力」とは「知力」「体力」「心力」のバランスがとれていること

(澁谷)

今、多くの企業や金融機関で求められている「グローバル人材の育成」についてご意見をお聞かせください。

(大竹)

現在私は「教養教育」の普及に注力しております。その最たるものが、IBです。詳細は次ページの図をご覧いただくとして、これは人間の基礎教育であり、知識の専門教育ではありません。日本はこれまで知識を重視していましたが、いくら専門知識が豊富でも「知力」「体力」「心力」のバランスが取れていなければグローバルリーダーとはなりえません。知力とは知識の「知」であり、もちろん高ければ高いほど良いのですが、私見としては平均より少し上で良いと思います。それから体力、そして忍耐力となる心力(しんりょく)を兼ね備えることで総合して「人間力」という言葉に置き換えられるのだと思います。私はこの中でも「心力」が最も重要であると考えます。

(澁谷)

確かに日本では「受験のための知識や学力を身につけさせる」教育が主流で、自分で考える力、道徳などの教育が薄れているように感じます。

(大竹)

澁谷さんは海外生活が長いのでおわかりになると思うのですが、日本人は論理的思考を養う教育を受けていませんので、情緒的すぎるように感じます。グローバル社会で活躍するには、第一に論理的思考を磨かなければなりません。第二に自己決定能力が必要となります。第三に弾力性。最後に柔軟性です。ありふれた言葉ですが、これも日本教育の欠けている点です。ですからこうした4つのことを身につけることで、たくましい人間としてどんな世界でも羽ばたける、生きていけると思います。

(澁谷)

そうですね。海外に出ると、あらためて多種多様な文化や考え方があるということを実感します。

(大竹)

様々な考え、異なる考えを持つ人たちに対する理解や尊敬を持てるようになれば、もっと人間力が磨かれるのではないかと思うのです。日本は島国ですので、どうしても内側に向けた考え方となり、危機感も希薄です。人間力を養うには、環境を変えて、良い刺激を受けることが必要だと思います。例えば、電気もガスもないようなところに独りで飛び込んで、自分で生きる手段や方法を発見する。これは過酷な体験ですが、そういった経験をすることで人間力が磨かれ、心理的にも変化が表れてくるのです。

自分の座標軸を持つ

(澁谷)

一言で「人間力」と言っても明確な定義がなくて、曖昧なところがあります。人間的な魅力に溢れているとか、倫理観や志など。最近、地方銀行の頭取や信用金庫の理事長から、「行員の人間力を磨きたい、そういう研修をしたい」という声を頻繁に耳にします。

(大竹)

昔は日本でも子供の頃から、家庭内で父親や母親が道徳や我慢、辛抱強さをしっかり教えていました。例えば「おしん」のように、生きていくために奉公に出されて、厳しい環境の中を乗り越えていくことで「人間力」を身につけていた人も多かったと思います。しかし、今それを求めても環境が違います。現在の日本の環境は、甘えは許す、物は充分手に入る。日本がここまで豊かになったわけですから仕方がないのです。だからこそ、自己管理をするしかないと思います。自分で自分をコントロールできる人間でなければ、第3者にコントロールされてしまう。それが一番怖いことです。それには自分の「座標軸」を持ち、芯をしっかりさせることです。自分で考えて自分で行動できる人間になって欲しい。企業や金融機関のトップが求めているのはそのようなたくましい人材ではないでしょうか。

「私はいったい誰なのか」常に自己確認を怠らない

(澁谷)

自らの座標軸を持ち、「人間力」を磨くためには、どのようにしたら良いでしょうか。

(大竹)

やはり他人との違いを見出すことではないかな、と思います。では、他人との違いはどうやって見つけたらいいのかといえば、「私はいったい誰なのか?」と自分自身に問いかけること、すなわち、自己確認です。常に自問自答すること。澁谷さんも実行されていると思いますが、1日10分でもいいですから瞑想といいますか、何にも邪魔をされずに考える時間を持つ。たとえ5分でも10分でも、非常に価値のあることだと私は思います。

(澁谷)

自らの座標軸をしっかりと確立し、グローバルな視点も持ち合わせる必要がありますね。これからの日本経済を担い、牽引していくリーダーにも強い信念と人間的な魅力が求められると思います。

(大竹)

日本経済が再び世界をリードするという自信を国民が取り戻すようリードするのも、リーダーの「人間力」です。それがどんなに重要なことかを考えておくべきではないかと思います。現在協議されているTPPをはじめ、グローバル経済においては日本経済に対する希望と同時に大きな懸念が浮上しています。また他の政策面でも、様々な難問に直面しています。今、日本の指導者たちに、「決断する勇気」が求められています。何かのアクションを起こすというような物理的な勇気を第1とすれば、第2には精神的な勇気であると思います。自分自身が正しいと確信していることに立脚して、その方向に決然として人々を引っ張っていく勇気。このような人間的な魅力、これが「人間力」だと私は思います。
 私も75歳と言う年齢に達しました。これからの人生は、次の世代の為に果たすべき責任を背負っていると思います。我々の生きざまが、そのまま次の世代に伝わるわけですから、「私たちは本当に正しい道を歩んでいるだろうか」と、繰り返し自問自答しています。

(澁谷)

今日は貴重なお話をありがとうございました。
◆大竹 美喜(おおたけ よしき)
昭和14年広島県生まれ。広島農業短期大学(現・県立広島大学)を卒業しアメリカに留学。
49年アフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)を創業。日本で初めてがん保険の販売を手掛ける。社長、会長を経て現在は最高顧問。本業の傍ら他の役職にも多数就き、とりわけ若い人材の育成に力を注いでいる。

(2014/7/29 掲載)