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大垣共立銀行 土屋嶢頭取インタビュー


▲大垣共立銀行 土屋嶢頭取

<澁谷>

御行は日本初の金融商品やサービスを次々と提供されていますが、御行のPRポイントについてお聞かせください。

<土屋頭取>

もっとも基本的なことは、あくまでもお客様の目線に立つということだと思います。そして、利便性をいかに向上させて行くか。また、実施するなら少しでも早くということです。
昨年創立110周年を迎えましたが、100周年のときに行員たちに意見を聞くと、「大垣共立銀行という名前が長い」、「大垣ということを含めて知名度が低い」、「知名度を上げてもらうか銀行名を変えてもらわないとやって行けない」と強く言われました。
どうしたらこれを打ち破れるか。銀行の名前を変えるだけでも膨大なお金がかかりますからね。長い名前といったら、地方銀行でも何行か長い名前があります。それと、地方の名前では勝負できないといっても、この地域でいうなら、「イビデン」さんは揖斐川電気工業からイビデンになりましたし、「西濃運輸」さんもこの地域の西濃を社名に使っています。
とにかく、長い名前も、大垣という名前も恥じることはないだろうということで、名前よりもイメージを変えようという戦略にしたのです。
お客様の目線に立った、いろいろな新しい商品やサービスは、そこから矢継ぎ早にでき上がって来たということです。
今や大垣共立銀行の名前を変えてくださいという声は、ほとんどうちの行員から聞かれなくなりましたね。

<澁谷>

お客様目線で銀行のイメージが変わったことで、行員の皆様の意識も変わったのでしょうか。

<土屋頭取>

変わって来たでしょうね。何回も何回も繰り返しやっているうちに、こういう考え方でやって行こうということがだんだん浸透してきました。なおかつ、自分たちのやっていることがたぶん間違っていないという自信につながってくると、次から次へといろいろなことを言うようになりましたね。

<澁谷>

銀行の貸出業務においても、「貸す」から「お客様に借りていただく」というように、まったく違う発想をしないと、選ばれる銀行にはなれないと思います。

<土屋頭取>

住宅ローンがまさにその原点でしょうね。住宅ローンがある間は選んだ銀行とつきあっていかなきゃならない。逆に発想すれば、つきあいたいと思っていただけるサービスがあれば、お客様の方から住宅ローンを申し込んでいただける。そのためにいろいろな商品やサービスを考えましたね。例えば口座管理手数料をいただいて口座を開設していただく時代も必ず来るだろうと、サービスを満載したゴールド総合口座やスーパーゴールド総合口座も作りました。今やかなり口座数も増えて来ていますよ。

<澁谷>

あと、サンクスポイント・プレゼントがありますよね。日本一周とか、温泉に泊まれるとか、残高によってポイントが付いたりするサービスが。

<土屋頭取>

やっぱりお客様にとって平等感がないといけないですね。新規の定期預金を作るとしっかりしたノベルティーを差し上げて、継続の時はポケットティッシュ数個で終わらせてしまうとか。むしろ継続していただいたお客様の方を大切にしなければいけないでしょ。これはポイント以外にないですよ。

<澁谷>

新世紀第2次中期経営計画「TRY!! BEST FIT BANK」の成果はいかがでしょうか。

<土屋頭取>

成果は上がっていますが、こういった低金利の情勢ですから、コストもかかりますし収益性については今ひとつ到達できなかった部分もありますね。
もう少し効率経営に徹して、たとえば不採算店舗を廃止するとか、ある程度思い切った人員削減等をやれば良かったかもしれませんが、お客様の利便性を考えると、そういったことはなかなかできなかった。
これは経営者自身の考え方でしょうけど、お客様のことを顧みない経営なら、実績を何も知らない部外者に経営してもらった方がいいでしょう。

<澁谷>

効率経営をやろうと思えばできたけれど、お客様の利便性や地域密着の考え方を優先されたということですね。

<土屋頭取>

銀行というのは、信頼性を増すために自己資本比率等々を中心にストックは必要だけど、利益だけを追求し過ぎてもいけない。利益はお客様にサービスとして返していくことがベストだと私は思います。

<澁谷>

愛知県へも積極的に出店されていますが、ボリュームの拡大はいかがですか。

<土屋頭取>

やはりボリュームを拡大するとなると、これまで営業していなかったエリアにも入っていかなければなりません。行きたいところへ行くということになるのですが、ただコストの面で考えれば、採算を合わせるのに5年、あるいは10年かかることもありますから、その辺をどう考えていくかということが必要ですね。

<澁谷>

御行は、2005年の10月に、『週刊ダイヤモンド』の「つきあいたい銀行」でトップにランクされていますけど、どのような点がお客様から評価されていると考えていらっしゃいますか。

<土屋頭取>

いろいろお客様からの声を伺っていると、利便性とか、非常に親しみやすくなって来たということでしょうか。まず店舗が明るい。それはもちろん、行員たちがいっぱい努力をしてくれているということ。それと、これだけマスコミに取り上げられると、自分たちの自信にもつながってくるんでしょうね、自分たちが見られているということは、やっぱり大事なことなんです。
お客様の方から、「お前のところは日本で最初だとか言っているけど、サービスが全然なってないではないか」とか、「大垣共立だと思って取引していたのに、この様は何だ」と言われるのは、やっぱり自分たちにとって反省すべきことです。それに加えて、「つきあいたい銀行の第1位」になったら、これはもう、いいかげんなサービスで許されるわけがないんです。

▲ 名古屋支店(エブリデープラザ " ラシック ")

<澁谷>

店づくりもすてきですね。岐阜のエブリデープラザは、コンビニとかいろいろなものが同居している。

<土屋頭取>

複合店舗ね。面白いでしょう。あれを開店するときにどうやってPRするかということになって、アドバルーンを上げたんです。スーパーがやっているからうちもやろうと。それからもう1つ、ガソリンスタンドでやっている旗振り。店舗が幹線道路沿いにあるので、いぶかる行員を説き伏せてガソリンスタンドの開店のときのように旗振りをさせました。
高山で開店したときは、古い街並みですから「ちんどん屋」。「さあこれから開店だ!行ってまいります」と、ドンチャッチャと街並みを歩くんです。
それからサティのインストアブランチ。音楽でウエスタンをやろうと思ったら、館内放送の手前、音は一切禁止と言われたんです。「そうか、音は禁止か」と思う傍から、パリのモンマルトルとかを思い出したんです、パントマイムを。子供を連れたお母さんたちがそれを見に来るんですよ。そこの店長は公募で唯一銀行員以外から店長になった女性店長。これも全国初ですよ。
「いらっしゃいませ」とテープカットをして、それでおしまい!という感じではなくて、「お客様が喜ぶものは何か」と考えると、当然そっちへ走って行きますよね。

<澁谷>

CSR、社会貢献として様々な活動をされていますが、地域における銀行の役割は何だとお考えですか。

▲ パディントンベア

<土屋頭取>

社会貢献活動は、当然やらなければいけないことだと思います。行員たちには10年も前から社会貢献推進委員会という行員主導型の委員会で、ベルマークを集めたりテレホンカードを集めたりと、それぞれがいろいろな企画を持ち寄って草の根的な活動を続けてもらっています。
また、100周年のときに女子行員たちの声で始めたパディントンベアというキャラクターがありますが、この絵本を子供たちに寄付しているんです。「三つ子の魂百まで」と言いますが、大きくなって思い出してくれるかもしれませんし、ひょっとして口座を持ってくれたりしたら、大成功ですね。

▲ 大垣共立銀行本店

<澁谷>

頭取になられてこの14年間、お客様の目線に立って最も注力したことは?

<土屋頭取>

絶えず繰り返し、繰り返し、新しいサービスを提供して来たことだと思います。そして、これからもそれを続けて行くこと。

<澁谷>

頭取は積極的に若手行員の経営参画を進めていらっしゃいますが、若手行員に期待することは何でしょうか。

<土屋頭取>

大垣共立銀行の文化、伝統、考え方、こういったものを継承して行って欲しい。
私はあくまでもお客様目線だったけど、次の世代が何をしても儲けさえすればいい、なんて変わってもらったら困るわけですよ。
だから、そうした大垣共立銀行の思想は、これでもか、これでもか、というぐらい教え込もうとしています。それでこそ地域密着型の銀行が残っていくはずだと、私は信じていますから。

<澁谷>

環境の変化に応じて銀行が変わらなければいけないという話がありますが、思想や考え方は変えてはいけないということですね。

<澁谷>

最後に、新しいことを次々となさる頭取の発想は、一体どこから来るのでしょうか。

<土屋頭取>

やっぱり血が騒ぐというか、同じことをいつまでもやることが嫌いというか、飽きっぽいのかもしれませんね。決して目立つとかいうことではなくて、やらなければいけないと思えることが自然と見えて来るというような感じです。
この大垣共立銀行のサービス業がある程度完成して、自分自身が辞めるときの夢は、新聞の全面広告に「これ以上どんなサービスができますか、大垣共立銀行。」と広告を出すことです。もちろん物理的に不可能なことは出来ませんが、我々としてはありとあらゆるサービスを完成しましたと。たぶんそういう広告はできないでしょうけど、それに挑戦していかなければいけないと思っています。

(2007/03/09 取材 | 2007/06/22 掲載)