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但馬銀行 法人営業部 地域密着推進課 課長 中島 高幸氏 インタビュー

聞き手:リッキービジネスソリューション株式会社 宮下 祐輔

行政と地域の事業者を繋ぐ

<宮下>

ー法人営業部 地域密着推進課についてお聞かせください。

(中島課長)

行政と地域の事業者を繋げ、地方創生や地域活性化に関する事業の企画、提案を行う部署です。兵庫県北 部の 3 市 2 町の行政に本部(法人営業部)の担当者をそれぞれ配置しており、支店の担当者と同行して、地方創生 や地域活性化に向けた取組みを進めています。地方版総合戦略の KPI・目標達成への取組みを通じて、取引先の事業 の成長を促すなど、地域の取引先と連携した施策を提案しています。近年の取組みにおける重点テーマは「観光」「食 品」「農業」で、最近さらに「人材育成」を加えました。

古民家再生を通じた観光活性化

<宮下>

観光に関する取組みについてお聞かせください。

(中島課長)

但馬地域(3市2町)は、面積こそ県の約25%を占めますが、人口や総生産は県の約 3%程度です。 観光が経済に与えるインパクトは大きく、さらには食品分野への波及効果も期待できるため、力を入れて取り組んでいます。 (一社) 豊岡観光イノベーション(平成28年6月に設立された観光DMO)の設立に際しては、役職員2名を派遣し、事業の立上げを支援しました(現在は理事1名を引き続いて派遣しています)。

まず、古民家再生による観光活性化への取組みとして、(一社) ノオトとの連携があります。ノオトとの連携による古民家再生は、古民家ブームの先駆け的な取組みです。兵庫県篠山市は関西圏国家戦略特別区域に指定され、そこ で古民家をリノベーションした宿泊施設等を展開しています。通常、ホテルや旅館のフロントは、宿泊施設の中にあり、宿泊施設と一体であることが旅館業法で定められていますが、同地域では特区制度を活用し、フロントと宿泊施設が別棟でも良く、さらには 1 つのフロントが複数の宿泊施設を兼ねることも認められています。

ノオトが手掛けた宿泊施設の中には、「集落丸山」といって7世帯ほどしかなく、車でしか行けないような地域で空き家3棟をリノベーションし、日本の伝統的な暮らしを体験できる宿もあり、本当に面白いと思います。

城崎温泉アートと泊まる旅館と古民家活用によるジビエレストラン

<宮下>

そのほかに、貴行・行政・事業者の三位一体で取り組まれた事例があれば、お聞かせください。

(中島課長)

総務省の地域経済循環創造事業交付金を活用した支援事例で、旧公共施設をリノベーションして開業した 「UTSUROI TSUCHIYA ANNEX」(旅館)があります。豊岡市が所有していた旧消防署施設を活用して、弊行の取引先(つちや旅館:(有) つちや)が「アートと泊まる旅館」をテーマに宿泊、カフェ(オープンテラス)、アートギャラリーとして事業化しました。弊行は計画策定から融資実行をはじめ、地域経済循環創造事業交付金の提案や申請手続きなどをサポートしました。

つちや旅館の経営者の親族に、但馬地域の文化や風土を表現した絵画を描き続けている方がいて、その方のアート作品を存分に味わえる旅館となっています。1階にはカフェとギャラリー、ミュージアムショップを設け、2階に素泊まりの宿泊部屋が用意されています。本来、城崎の旅館で素泊まり旅館は珍しいのですが、外食を好む外国人観光客の誘致や近隣飲食店などへの波及効果を期待して素泊まりにしています。全5部屋ある宿泊部屋の中にも各々アートが施され、外国人観光客に非常に人気で、ほぼ満室状態が続いています。

そのほかに、当時金融庁(監督局銀行第二課)から養父市に出向していた方(小泉亮輔氏)からの情報提供をきっかけに、販路開拓(ビジネスマッチング)と新規開業に繋がった事例もあります。ある日、小泉さんから、但馬に移 住し、自ら食肉の処理施設を立ち上げた猟師兼食肉加工事業者の販路開拓を依頼されました。これまで鹿肉のビジネスマッチングなど経験がなかったため、少し戸惑う部分もありましたが、小泉さんから「猟師は非常に一生懸命取り組まれていて、本当に美味しいお肉(ジビエ)を扱っている」という事業者の話を受け、できる限りのことをやろうと取り組んだ結果、販売先である飲食店「無鹿」(丹波市)と出会うことができました。

その猟師を連れて「無鹿」をたずねると、持参した鹿肉をその場でしゃぶしゃぶにしていただき、それを食べた瞬間、あまりの美味しさに「これはいけるのではないか」と思いました。結果として、猟師兼食肉加工事業者と「無鹿」 の取引が始まり、出荷も順調に進んでいます。

こうしたなか、今度は販売先である飲食店「無鹿」から店舗移転と事業規模拡大の案件相談がありました。弊行は計画策定や融資実行などを支援し、古民家をリノベーションした宿泊と、グリーンツーリズムとしての農業体験がで きるジビエ専門レストラン「無鹿リゾート」を平成30年9 月にリニューアルオープンしました。

神戸ビーフで A-FIVE と連携

<宮下>

但馬・養父 6 次産業化支援ファンドについてお聞かせください。

(中島課長)

弊行とみずほ銀行、A-FIVE(農林漁業成長産業化支援機構)、但銀リースで組成した「但馬・養父 6 次 産業化支援ファンド」の第1号投資案件として、西脇市の(株) 川岸畜産に20百万円を出資しました。川岸畜産は、但馬牛のブランド価値向上に取り組み、牧場を経営する川岸裕人さん(父)と、精肉の小売・卸売事業者である川岸正樹さん(子息)が設立した会社で、自ら飼育する但馬牛の枝肉(神戸ビーフ)を活用した飲食店を運営しています。

社長の正樹さんは事業意欲が旺盛で、正樹さんから「西脇市に川岸牧場の直営第一号店となる飲食店を開業したい」という話を受け、弊行が支援しました。A-FIVEと連携し、専門家(6 次化プランナー)派遣による周辺の商圏 調査や、事業計画の策定支援を受けることができました。現在、弊行からも職員1名を社外取締役として派遣し、ファンドの定期会議にて、資金繰りや部門別採算の話し合いをはじめ、金融機関としてのアドバイスを行っています。

同社とは、「ゆいプリマ」という高級サロンバスでも連携し、神戸ビーフとワインを堪能するバスツアーを開催しました。過去2回の開催はともに予約で満席となり、大好評の企画となりました。また、単に神戸ビーフを味わうだ けではなく、牧場オーナーである裕人さんが来られ、但馬牛の育て方などもお話いただくなど、川岸畜産についてアピールする非常に良い企画でした。

支店が持つ情報から本部がその価値を見出す

<宮下>

ひょうご信用創生アワード成長部門で受賞した (株) グリーンウィンドへの支援についてお聞かせください。

(中島課長)

グリーンウィンドは、弊行山東支店の取引先で道の駅「但馬のまほろば」を運営しています。いわゆる地域商社的な役割を果たしており、地元食材などを観光客に販売し、イベントなどで地域資源のPRを行っています。 弊行も同社だけで 100 件近いビジネスマッチングを提供するなど、地元の特産品を多く取り上げていただいています。

A-FIVE の案件には至りませんでしたが、A-FIVEから大手食品会社を紹介していただき、子会社への出資や希少品種の作付、営農指導をはじめ、販売先を紹介してもらうなど、多くの支援を受けることができました。売り場の一 番奥にある野菜の販売スペースが人気で、地元農家の方々がそこに野菜を持ち込んでくるのですが、農家同士が互いに競い合うような仕組みが出来上がり、相乗効果も生まれています。野菜だけで2~3億円の売上高があり、年間来場者は約200万人と、地域の中でも非常に活気のある道の駅です。

私が同社と出会ったのは、百貨店の催事開催に伴い、地域の食品を調達しようと取引先を回っていたときで、そこで意気投合したことをきっかけに、ここまで取引深耕するに至りました。支店が持っている情報から、その価値を見 出していくのが、我々本部の役割だと思っています。支店にはたくさんの情報がありますが、その価値に気付いていないケースも多く、そこで我々が入ることで価値を見出し、行政の支援を受けるための手続きや調整、計画策定などを通じた事業の成長を実行支援しています。

金融機関が地域の雇用と人材育成を支援

<宮下>

最後に、人材育成についてお聞かせください。

(中島課長)

地域の中小企業の場合、新卒採用は隔年で実施したり、知名度がないために、一社だけで採用活動を行っても、学生を呼び込めないという事情があります。そのため、弊行が養父市と連携し、学生の夏休み期間を活用して、 地域の中小企業10社程度を集めたインターンシップを開催しています。神戸を中心に、兵庫県内の大学を回り、キャリアセンターや集会に参加して告知し、応募者を集めています。応募者を集めるのは非常に苦労しますが、地元の優良企業を知ってもらいたいという、養父市の強い想いもありますので、地道に取り組んでいます。

市が学生の交通費を負担し、1社につき1~3名程度参加のインターンシップを開催していますが、期間設定の難しさなどもあり、今もまさに3年目の開催に向けて喧々 諤々の議論のもと、企画を進めています。1週間のインターンシップ期間が短いという事業者もいれば、長すぎて負担になるという事業者もいて、毎年調整に苦労しています。

なぜ、金融機関主導でここまでやるのかと言うと、企業の成長には人材確保が必須であることから、経営者に人材採用や育成に関する気付きの場を提供し、自社の魅力をしっかりと学生に伝えて、効果的な採用活動ができるようになっていただきたいからです。地域に若者を呼び戻し、中小企業が人材を確保をするためには、大手とは異なるやり方を しなければなりません。例えば、中小企業であれば、社長の右腕として働くことの価値観を提供することも一つです。

ちなみに、インターンシップ開催前には、参加企業を集めて合同の勉強会を開催し、どうすれば自社の魅力を限られた期間でPRできるかを考えていただく機会を提供しています。結果として、我々の手を離れ、通年で採用活動ができる企業も出てきています。

※金融機関ドットヨム36号9ページに記事が掲載されています。

(2019/01/18 取材 | 2019/2/10掲載)