TOP > インタビュー > 中川 昭一 財務大臣兼金融担当大臣

中川 昭一 財務大臣兼金融担当大臣 インタビュー


▲中川 昭一 財務大臣兼金融担当大臣

              

<澁谷>

 サブプライム問題から始まった世界的金融危機の原因について、どのようにお考えですか。

<中川大臣>

 世界が金余りで低金利という中で、様々な金融加工商品を作った中の一つがいわゆるサブプライムローンです。皆が住宅ローンの元利金を支払っているうちは良かったのですが、金利が上がって支払えなくなった途端に全てが逆回転したということです。
 1907年の金融恐慌でも、1929年の大恐慌でも、日本のバブル崩壊でも、ITバブルでも同じことを繰り返していますが、今回の場合は規模的な意味でも世界的な意味でも、コンピューターがますます活躍しているという意味でも、質と量においてきわめて大きく、破壊的な危機がきています。

<澁谷>

 金融機関への監督、規制の国際協調など、これからの金融行政のあり方や方向性について、ご説明ください。

<中川大臣>

 金融、金融機関がグローバル化する中で、監督行政が追いついていないというのが現状です。これは今回の金融危機の反省点で、この危機意識は麻生総理も強く持っています。ですから単に危機対応ということだけでなく、二度と繰り返さないように反省し、きちんとした対応をしなければいけません。
 格付けの問題、会計の問題等ありますし、リスク管理という意味でも、例えば、証券化商品とはどういうものなのかを行政はきちんと理解する必要があります。

              

<澁谷>

 金融不安による景気減速に対する追加経済対策が決定されましたが重点項目について、ご説明ください。

<中川大臣>

 追加の経済対策は第二弾まで出しました。10月28日に私の判断で空売り規制を出しましたが、会計の問題、自社株取得の問題など、金融上の秩序維持、あるいは過度な変動への対応をしていかなければいけません。

<澁谷>

 中小企業の資金繰り対策について、ご説明ください。

<中川大臣>

 10年前も30兆円の信用保証、特別保証によってかなり効果が上がったと思っていますが、それ以来、中小企業や地方の経済状況は決して良くなってはいません。そういう中で、金融機関側の状況によって貸出ができない、あるいは貸し剥がしをするということがあってはいけません。金融機関側が貸せる体制を作っていくために、金融機能強化法を現在国会で審議しています。
 これは、あくまで金融機関が中小企業への貸出を増やすことが目的です。資本注入だけでなく、査定の時も一定の基準を満たせば問題なしという、監督行政あるいはマニュアルの改正も含めて中小企業に資金を貸し易くしたいという考えで進めています。

<澁谷>

経済のグローバル化の中で、日本の金融・資本市場の活性化や競争力強化のために求められることはなんでしょうか。

<中川大臣>

  欧米に比べれば日本のリスクは小さいのですが、資金の受給バランスが取れていない、あるいは細くなっているという状況はなんとしても打開していかなければいけません。

 金融機関は、損失を出すものは出して、個々の金融機関も外国に比べると比較的良いので、この際、慎重かつ積極的に海外の金融機関や企業と関係を深めていくことも、我々としては期待しています。 <

<澁谷>

 郵政民営化や政府系金融機関の民営化など、銀行を取り巻く環境は大きく変化しています。今後、顧客から選ばれる銀行となるためには、どのような役割や機能を果たしていくべきでしょうか。

<中川大臣>

 借り手、預け手の目がともに肥えてきていますから、今までのような直感で金融ビジネスを考えても、業務に精通しているとはいえません。今の状況を見ても、風評で倒れてしまうということも世界中であり得ますから、そういうことに耐え得るようなサービス、業務、体質をさらに強化し、グローバル化はやむを得ないと思いますが、その中にスピード感と情報力を持ってやっていかなければいけません。

 金融庁については、私は監督行政だけでなく、ある程度リスクを取って育成行政もやらないといけないと思っています。

<澁谷>

今後、地方銀行などの地域金融機関が果たすべき役割や、銀行と企業との関わり方などについて、お聞かせください。

<中川大臣>

 特に地方の中小企業にとって地場の金融機関は非常に大事ですから、付き合い方も違います。地域金融機関側も経営者や従業員ひとりひとりを知っているといった情報力があります。そういう中で、地域金融機関は金融庁が決めた数字だけで制限をするという事ではなく、地域のためになると思えば積極的に関わるべきです。企業も金融機関もお互いがハッピーになれば良く、金融庁が後ろから足を引っ張ってはいけません。

 このたび、中小企業の金融円滑化に向けた監視を強化するための「大臣目安箱」を作りました。やはり貸し出しの問題についてのご意見が多いのですが、中小金融機関からも届きますし、信用保証協会に対する苦情も届きます。

<澁谷>

 若手銀行員、そして銀行で働きたいという意欲を持った学生に期待することや、求められることについて、お聞かせください。

<中川大臣>

 バブルを知らない人が世の中に出てきて、後ろにノンバンク系のファンドか何かがついた時代の風雲児のような人が、失敗をしたり犯罪を犯したりしています。

 どんなにグローバル化、コンピューター化しても、あまりにも異常なレバレッジだけが評価されるのはおかしく、これは規制をする以前に常識の問題です。 レバレッジの成功者が生まれるような企業が、就職企業人気ナンバー1というのはちょっと違うのではないかと思います。

 ファンドなり金融の世界に入る人は、大恐慌と日本のバブルを必須で勉強しないといけません。金融はいつの時代でも必要ですし、儲かれば適正な所得を得るのは当たり前ですが、もう少し地に足のついた考えを持ってほしいと思っています。人に迷惑をかけなければ良いのですが、今の状況は、国までつぶれてしまうかもしれないほどの迷惑を世界中が被っています。

(2008/11/06 取材 | 2008/12/19 掲載)