中国瀋陽市 楊 副市長 インタビュー
<澁谷>
瀋陽市楊副市長閣下の訪日を心より歓迎いたします。瀋陽市は近年目覚しい発展を遂げているとお聞きしておりますが、どのような都市でしょうか。
<楊 副市長>
中国東北部・遼寧省の省都である瀋陽市は、ちょうど北海道・函館市と同じ緯度に位置しており、約1万3千km2の面積に約800万人の人口が暮らす都市です。
その起源は古代にまで遡り、紀元前300年には既に街が築かれ、清朝時代には副都が置かれるなど、長い歴史において常に重要な役割を担ってきました。現在は中国東北部の経済・文化の中心都市として成長を続けています。
産業においては、古くから機械、冶金、化学などの重工業が盛んであり、周辺都市も含めた一大コンビナートを形成しています。中国の国有企業、民間企業のほか、GE、BMWといった欧米系の企業の進出も数多く、加えて近年では日系企業の進出が活発に行われています。
一方で、瀋陽市内に所在する東北大学から発して中国を代表するソフトウェア開発会社に成長した東軟グループが本社を構えるなど、ITを中心とした先進的技術産業の発展にも重点を置いており、この分野においても日系企業の進出や日本の企業との取引が拡大しています。
これらの産業を支えているのは、充実した社会インフラです。中国東北地域最大の国際空港と周辺都市への高速道路網は、瀋陽市をして交通の要衝たらしめており、また、電力、水、通信等も高度に整備されています。大学・研究都市として人的資源も充実しており、日本への留学生を多く輩出していることから日本語人材にも富んでいますので、日本とのビジネスには大変適した環境であると言えるでしょう。
<澁谷>
昨年12月、瀋陽市は私が顧問を務めております日本有数のベンチャーキャピタルである日本アジア投資(株)と業務協力協定を締結しました。今回の協定締結の目的と意義についてお聞かせ下さい。
<楊 副市長>
今回の協定締結は瀋陽の産業・経済の発展において大変重要な意義があります。瀋陽市では従来からの産業の中心である重工業の高度化と、ハイテク・IT等の高付加価値産業の育成を重要施策に掲げていますが、いずれの分野でも日本企業が先進しています。瀋陽市は日本企業の進出を市を挙げて歓迎します。そして今回の日本アジア投資との協定締結は瀋陽市政府による日本企業の瀋陽進出のための基盤づくりとして、重要な一歩のひとつとなります。
瀋陽には安川電機やNSK、鹿島建設、積水ハウス、伊勢丹百貨店、山田電機をはじめとして現在900社を超える日系企業が進出していますが、近年の中国と日本の経済交流の拡大のもと、より多くの日本の企業に瀋陽を拠点とした中国市場進出の機会を提供したいと考えています。日本には名だたる大企業のみならず、高度な技術や独自のサービスを有する多数の有望な中小企業・ベンチャー企業が存在しており、これらの企業のなかには中国進出を企業成長の重要戦略として取り組んでいる企業も数多く見受けられます。
しかしながら、実際には情報不足や適切なパートナーの支援が無いことによって中国進出の準備が進められず、なかなか実現に漕ぎ着けられない企業も多いと聞きます。瀋陽市では日本の企業・金融機関に幅広いネットワークを築いている日本アジア投資との協力関係を推進することにより、中国進出を希望する企業に対して、連携して情報提供やと資金面の両面からの支援を提供したいと考えています。
また、瀋陽の企業にとっても今回の協定は日本進出や日本企業との取引開始に向けた大きなチャンスとなるものと期待しています。
今年4月を目処に、日本アジア投資により「瀋陽ジャパンデスク」が開設される予定です。瀋陽現地から日本に向けて情報を発信し、また、瀋陽に進出した、または進出を希望する日本企業に対して、瀋陽市政府と連携した事業支援を提供します。瀋陽市政府では、この瀋陽ジャパンデスクが瀋陽と日本の企業間交流の架け橋となることに大いに期待し、運営を全面的に支援します。
<澁谷>
今回の訪日滞在期間中には、「瀋陽市ビジネス環境セミナー」(1月26日(水)於:東京・学士会館)が開催されますが、どのようなねらいを持たれていますか。
<楊 副市長>
「瀋陽市ビジネス環境セミナー」には、瀋陽市政府関係者のみならず、瀋陽の情報通信産業の集積地である瀋陽国際ソフトウェアパークをはじめ、現地企業20社余りの役員・幹部社員も出席します。
現在、瀋陽市政府として日本企業を含む海外企業誘致のための更なる環境整備に注力していますが、ビジネスの要はやはり企業同士による直接の対話ではないかと考えており、今回のセミナーにおいて瀋陽と日本の企業間の交流が進むことを望んでいます。
また、既に中国ビジネスに対する取り組みを開始されている金融機関、地方自治体に、その経験談やアドバイスを発表・共有頂く予定です。日本の多くの方々に瀋陽市と瀋陽の企業について知って頂くことを希望するとともに、我々も日本の企業・金融機関・行政からの意見を今後の経済開発の促進のために生かしたいと考えています。
<澁谷>
日本企業の中国進出あるいは中国企業の日本進出にあたって、日本の金融機関にはどのような接点を期待されますか。
<楊 副市長>
銀行をはじめとして日本の金融機関は、企業規模の大小を問わず顧客企業との近接な関係を築き、経営に対しても大きな影響を持っています。これは間接金融の機会が大企業にほぼ限られている中国の状況とは大きく異なり、非常に興味深いことです。
日本の企業が中国進出を希望する場合、まず最も信頼を置く金融機関に相談されることでしょう。企業によっては社運を左右する非常に大きな決断になることもあるかと思いますが、金融機関から企業に対しての適切なアドバイスと前向きな支援を期待したいと思います。瀋陽市政府は金融機関の皆さんの提案に貢献できるよう、必要な情報を積極的に提供します。また、「瀋陽ジャパンデスク」では、より実践的な情報提供と支援活動を通じて、金融機関の皆さんからのご相談に応えていきたいと考えています。そして、皆さんの顧客企業が瀋陽に進出頂けるのであれば、その進出が必ずや成功に結びつくよう、瀋陽市政府として最善の支援を約します。
中華人民共和国瀋陽市政府駐日本経貿代表処 http://shenyang-japan.com/
日本アジア投資株式会社 瀋陽ジャパンデスク担当 電話番号 03-3259-8545