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群馬銀行 四方浩 頭取インタビュー

お客様に一番近い、お客様の一番役に立つ銀行


▲ 群馬銀行 四方浩 頭取

群馬銀行の成り立ち、PRポイント

<澁谷>

本日は、お忙しい中、いろいろお話をお聞かせいただけるということで、本当にありがとうございます。よろしくお願い致します。
まず最初に、御行の100年以上の歴史と、その中で培ったお客様、個人、法人に対するPRポイントや強みについて、お話をお聞かせ下さい。

<四方頭取>

群馬銀行のルーツは明治11年設立の国立第三十九銀行まで遡ることができますが、その後県内各行と合併を繰り返しており、最終的に前橋の旧群馬銀行と高崎にある上州銀行が合併して群馬大同銀行ができた昭和7年を創立としています。その後、昭和30年に群馬銀行と名前を変えました。群馬銀行が今年で75周年というのも、その昭和7年から起算しています。
PRポイントとしては、この3月に終わりました中期経営計画「R-プラン」で掲げた、「お客さまに一番近い、お客さまの一番役に立つ銀行」という私どもが目指す企業像があります。言葉はその都度少しずつ変えていますが、群馬銀行は一貫してそういうイメージを持ち続けてきました。いわば地域密着ということになり、そういう意味では地方銀行の取るべき道を辿っていると言えます。
それから、強みといえば、第1番目として「強いブランドイメージ」があります。群馬県で銀行と言えば群馬銀行というのがすぐにお客さまの頭に浮かぶということであり、これは個人・法人共に、お客さまとの間に培った信頼感を伴ったパイプの太さということです。
それから、第2番目の強みは良質の取引先が多いということです。 それには理由が2つあります。1つは東京に近いというメリットから、中小企業も含めた企業が成長していくのに恵まれた地盤であるということであり、それからもう1つは、製造業に関して日本の中でも技術の集積が進んだ地域であるということです。
その技術集積の歴史的淵源は2つあって、1つは中島飛行機です。これは直接的な技術の継承だけではなく、中島飛行機から出た技術がいろいろな形で県内に生きていて、そういうものをベースに製造業をやっておられる会社がいくつもあります。
それからもう1つは繊維産業です。繊維産業というのは染色とか紡ぐとか、いろいろな技術を使っていまして、非常に高い技術力が必要な産業でした。繊維業の技術をベースに、製造業に変わっても高い技術を持っている企業が多くあります。京都に世界的にもユニークな企業が多く存在するというのは、繊維が盛んであったということとも関係があるのではないかと思っていますし、桐生や伊勢崎などにも共通する同じような基盤があるということです。
これらの技術集積は、群馬で何かをやろうとしたときに、それに関係する必要な部品などがすぐに集まるといったことに繋がります。例えば自動車産業などは特に裾野が広いので、そういう厚みというようなものが集積しているというのは1つの大きなメリットです。

<澁谷>

ユニークな技術の会社さんが多いということですね。

<四方頭取>

そうです。

前回の中期経営計画「R-プラン」の評価

<澁谷>

ありがとうございました。次に、今年の3月に終了した「R-プラン」、すなわちリテール、リターン、リレーションという3つのRから成る中期経営計画がございましたが、その成果についてお伺いします。

<四方頭取>

「R-プラン」の目標は定性的な目標と定量的な目標があります。
定性的な目標として、「新しい時代にマッチした体制と組織づくり」を掲げました。それは新たな中計「Q-プラン」でも進めていくことになります。
定量的な目標としては2つ掲げ、1つは不良債権処理を真の意味で終わらせることでした。
「R-プラン」のスタート時点では、地銀優良行に比較して当行の対応は遅れていたと思います。「R-プラン」終了の段階でこれは何としても終わらせようという目標を立て、最終の3月期のところで5%台半ばの目標に対し4.66%の実績を実現することができました。
今後は、地方銀行というビジネスモデルからすると、この数字をどんどん下げていくことを掲げてやるということでもないのではないと考えています。むしろ、一つ一つの企業の中身を見て、多少時間がかかっても、将来に可能性があるところは支援していくというのが我々の仕事なので、その結果として、不良債権比率が何パーセントという結果で出てくる話ではないかと考えています。
ただ、地方銀行全体の不良債権比率もだいぶ下がってきていますので、引き続き不良債権の処理についてもしっかりと認識を持ってやっていきます。
もう一つの定量的な目標は、新しいビジネスの拡充と、いわゆるリテール貸出の量的拡大です。
投信、保険の手数料を中心とした手数料ビジネスの拡充については、掲げていた目標を上回ることが出来ました。役務取引等利益を3年間で約3割増というなかなか厳しい目標でしたが、我々の努力もあるし、また世の中全体の流れの中で大きくそれを上回れたということです。
中小企業向け貸出は3月末で約800億円目標残高を上回りました。個人向けの貸し出しについてもわずかですが目標を上回ることができました。
目標に掲げた中で未達成だったのは収益関係です。例えば、コア業務純益については目標に対し若干の不足となりました。これは、競争の中で利鞘がなかなか確保しにくかったということや、不良債権処理に伴う金利減少などが原因です。

<澁谷>

そうしますと、不良債権処理に伴う、金利収入減少などで収益が若干未達成だったけれども、そのほかのところは役務収益や中小企業のリテールの貸出などは全部上回ったということですね。

<四方頭取>

そういうことですね。

新中期経営計画「Q-プラン」について

<澁谷>

今年度から始まりました「Q-プラン」ですが、お客さまに選んでいただける、サービスの質の高い銀行を目指しておられる。この営業戦略の中で「当たり前品質」とか「魅力品質」とか、非常に分かりやすいというか、ネーミングが面白いと思うのですが、その辺の「Q-プラン」の重点施策について、お話を伺えればと思います。

<四方頭取>

「Q-プラン」の柱は2本あり、1つは「サービスの質の向上」、2つ目は「営業推進に人員を投入するため、人員の増加を図る」というものです。
1つ目の「サービスの質の向上」を考える時に、まず基本認識として、10年タームで見た場合の地方銀行を取り巻く非常に厳しい環境があります。郵政民営化や過剰な金融機関数という状況を考えると、金融機関同士の競合はますます激しくなることが予想さます。また、日本経済を成長率の面から考えると、自動車関係や重厚長大産業など、勢いのある新興工業国など世界にアクセスできるような産業は良いのですが、そうでない国内産業についてはパイの拡大が限られるということです。
地方銀行というのは、概して言うと、国内産業的なところですから、パイが拡大しない業界の1つということになります。そういう中でやっていくためには、他に比べて一味違うという差別化をしていかないと生き抜いていけない、あるいは成長していけないということになります。
業界によって差別化の戦略は違うと思いますが、銀行というのは規制を長く受けていただけに、サービスが非常に遅れている業界で、従って、その中で早くそれに手を付けてやることによって差別化が可能だと考えています。
「当たり前品質」というのは、要するに、それが最低限提供されていないと、こんなところでは取引ができないとなってしまうというものです。しかしながら、それは最低限のところですから、それだけではだめです。それに加えて、魅力ある商品、サービス、機能の提供がないといけないということです。
その「魅力品質」の向上にはいくつかの要素があると思いますが、個人のお客さまについて一番重視しているのは、「相談機能の充実」です。これは例えば、投信、保険というようなことで言えば、お客さまの家族の状況や相続問題、教育への考え等のいろいろな背景全体の状況の中で、現在の資産状況を勘案したうえで、リスク分散の手法やバランスのとれた資産形成の提案などを目指します。
全体の状況をみて適切な提案を行うということは非常に難しいですよね。だから、そこが大きな差別化になると思っています。
それから、法人については、いわゆる「総合金融サービス機能」を充実させます。例えば融資についても、私募債やシンジケートローンなど資金調達手段が多様化しています。その他にも、デリバティブや事業承継、食の交流会などのいわゆるビジネスマッチングとか、あるいは上場への支援とか、いろいろな幅広いニーズが出てきています。そういうものにいかに応え得るかというところが、ほかの金融機関と差別化していく一番の大きなポイントであると考えます。貸出金利ということだけだと、金利競争だけということになってしまいます。
魅力品質の実現は、何か体制を作ったり、物理的に相談ブースのようなものを作ればできるということではなく、一人一人の行員のレベルの問題にもなります。これは、5年、10年というタームで取り組んでいかないと効果は出てこないと思います。ですから、最終的には人材育成というのが非常に大きな課題になってくると思いますが、そういうところまで含んだ意味で「クオリティバンクへの挑戦」と言っています。
「Q-プラン」の2つ目の柱は「営業推進に人員を投入するため、人員の増加を図る」という人員問題です。ここ数年は、いわゆる団塊の世代がどんどん辞めていかれるので、多少でも人員を増やすというのはかなりの努力を要します。今回は中途採用の大幅増加を打ち出しています。今後3年間で約90人の採用を行う計画ですが、それだけの人員が短期間に入ってくると、行内のカルチャーという点でもかなり影響を受けるのではないかと思います。逆に言うと、それぐらいやらないと多少の人員増加もできないということです。

<澁谷>

今、中途採用の方を90人というお話がございましたが、その中途採用のイメージというのは専門職ということですか。それとも、いわゆる営業ですか?

<四方頭取>

どちらかというと、営業関係が中心になると思います。全体としては営業推進、法人関係の渉外とか、あるいは預かり金融資産の窓販の拡大といった業務が中心です。
ただ、システム関係や、ほかの金融機関や証券会社等で新しい分野を経験されているような人が採れれば、それも良いと思っています。

<澁谷>

お話を伺いますと、個人、法人について、相談機能の充実や総合金融サービスということでとにかく質を高めること。サービスの質の向上を図りながら、量的な方も人員の投入によって増やしていくということで、質を充実しつつ、量を拡大していくというのが頭取のお考えということですね。
そういう相談機能とかコミュニケーション能力とか、いろいろな情報の収集能力とか、提案能力とか、そういういろいろな能力を要求されるのでなかなか難しい。簡単に提案営業とかソリューション営業というけれども、従来の営業からぱっと変われるかというと、そんなことはないですよね。

<四方頭取>

そうですね。これは少しじっくり腰を据えてやっていかないと、すぐに効果が出るというような簡単なことではないと思います。

出店戦略について

<澁谷>

10月15日に長野県で初めてご出店されるというお話でした。 そして今、埼玉県で23店舗、栃木県にも10店舗ということで、従来は、南の方へ進出する方針とのことでしたが、今回、長野県の方にご出店される、その辺の戦略をお聞かせ下さい。

<四方頭取>

出店戦略の1つの大きな方針である「南下政策」はかなり以前からずっと一貫してやってきています。その考え方は大きな柱として変わりません。
南下政策によって埼玉県内に23カ店ができたことによって、念願であった埼玉県内における面の営業が可能なネットワークが一応整ったと理解しています。そして、それが一応整ったことから、今後の出店戦略については、「個別に検討する」という次の段階に入ったと考えています。
上田支店の場合も、開設前から上田市に群馬から通ってお客さまと実際に取引をし、お客さまの声を聞いて出店を決めました。 今後、他の地区に出店する場合も、実際に当たりながら成長性と競合関係を見て、いかに実績を上げられるかを、採算も含めて検討することになると思います。
出店を個別に検討する場合、3つの要素があります。1つはその地域での成長性で、2番目は、金融機関との競合関係。そして3番目はその地域でのいろいろな意味での信用リスクの状態です。
信用リスクというのは、その地域に勢いがない場合には、そこにある企業は業績の悪化が懸念されるという成長性との関係で考えられます。ただし、そういうことだけではなく、特に京浜地区についてはまったく違う要素もあり、慎重に見ていきたいということになります。
信用リスクを見ていく時に、2つ気を付ける必要があると思います。1つは、情報が集まらないということです。群馬県内であれば、そこの企業から直接話を聞くとか、数字をもらうということでなくても自然に入ってきますが、東京はそれがありません。そういう点ではより慎重に見ていかないといけないと思っています。
それからもう1つは、たぶん回収率が違うのではないかと感じています。表面的な倒産確率が東京は高いということでもないと思いますが、倒れたときにいかにまじめに再建、再生に努力するか、あるいは借入金を返済する意欲といったものが違うように思います。地方にはやはり義理があります。そこの地域で長く暮らしてきた、あるいは、たぶん今後もその地域で自分ないし自分の縁戚、子供が暮らしていこうという人が多いから、あまり不義理はできません。そういった意味で回収率が違うのではないかと思っています。
余談になりましたが、いずれにしても、今後は個別に見て、実際にそこへ商売を仕掛けながら、その結果も見ながら、さらに地域性を考慮に入れて検討していく段階に入ったと言ってもいいと思っています。

<澁谷>

そうすると、今まで全然関係のないところにぽっと出るわけではなくて、こちらからある程度の実績などを見ていて、十分検討した上で店を出してもいいという結論に至るということですね。
それから、今の信用リスクのお話での回収率というのは私も初めてお伺いしましたが、確かに東京ですとドライですし、大衆の中に紛れてしまうようなところがあって、返さないでぱっと辞めてしまって、さっさと逃げるというようなところがあるとおっしゃっているのですね。

<四方頭取>

法人についてはきちんとした調査結果があるわけではなく、ある意味私が勝手に思っているのですが、ただ、個人については間違いなくあると言われています。

テレビへの番組提供について

<澁谷>

それから、群馬テレビで『グッドライフマガジン』というテレビ番組を放映されていますが、これは預かり資産への誘導とか、そういったことがあると思いますが、これについての狙いはどういうところにありますか。

<四方頭取>

当行では地元の群馬テレビで『グッドライフマガジン』と『ビジネスジャーナル』という2つの番組を提供しております。
『ビジネスジャーナル』は取引先のPRです。番組内で会社の内容を紹介しています。これは取引先にも非常に喜ばれています。テレビで取り上げられることにより、県内での自社の信頼度が高まったり、従業員の士気・モラルの向上にも繋がるようです。
平成5年の秋からで、放映回数が700回を超え、今までに延べ約1,300社の紹介をしてきました。
『グッドライフマガジン』の方は、内容としては一般的な金融知識や賢い借り入れの方法とか、資産形成の手法などの情報提供と群馬銀行の商品・サービスのPR、地元の食・医療に関する情報の提供の3つのパートから成っています。目的のひとつはCSRです。国の「貯蓄から投資へ」という施策に沿った正しい金融知識の普及、あるいは多重債務者の削減などに個別の金融機関として協力しているという部分もあります。
それらの知識を得て、金融商品をいざ買ってみようということになった時に、それなら群馬銀行で買おうということになれば良いと思っています。

<澁谷>

金融教育というんですか、そういう社会的貢献というか、CSRというのをやりながら、ある意味、群馬銀行さんのPRにも使っているという感じですね。

<四方頭取>

そういうことです。

地方銀行のあり方

<澁谷>

先ほど、地方銀行の在り方ということが頭取の方からお話がございました。特にこれから将来に向けて、中小企業の経営者から求められる地方銀行の在り方とか、機能というんですか、先ほどのいろいろな総合金融サービスというお話がございましたが、これについてはいかがですか。

<四方頭取>

地方銀行に求められているのは突き詰めていくと2つであると思います。
1つは、先ほど申し上げた、幅広いサービスということだと思います。単にお金を回すというだけでは銀行は評価されない時代になり、先ほど申し上げたような幅広いサービスがないとなかなか差別化はできないということです。
それからもう1つは、いざというときの支援です。これははっきりそう言うお客さまがたくさんいらっしゃいます。「そういうところがなかったら、メガバンクの方が金利も安いし、いいんだ。そこは群馬銀行は変わらないんだろうね」と。突き詰めて言うと、もし変わったら取引も解消になるということです。
先ほどの不良債権比率についても申し上げましたが、単純に不良債権数字を下げていくということだけにウエイトを置いてやっていくのは、地方銀行としては自分の首を締めることになると考えています。
そこは一件ごとに中身をみて、企業にとっても本当に手仕舞った方がよければ、きちんと説得して対応するし、再チャレンジというか、頑張れるのであれば、その分のリスクを背負うこともあり、それでだめだった時は当行の損失になります。ただし、それは必要なコストであると考えて、ある程度のそういう可能性は秘めつつやることが地方銀行としては求められているし、それは別に慈善事業という意味ではなく、そういうものとしてやっていくのが地方銀行というもののビジネスモデルだろうと思います。

働きがいのある銀行

<澁谷>

2003年6月に頭取に就任されて、頭取として一番力を入れてやってきたことは何ですか。

<四方頭取>

やや抽象的になりますが、「群馬銀行が長い目で見て、追い求めていくべき目標をどう設定するか」ということであり、それから、「その目標との関係でそれへの道筋をどう付けるか」ということだと思っています。
追い求めていくべき目標という意味では、今回の「Q-プラン」の2つの目標。すなわち、1つは「サービスの質の向上」と、もう1つは「漸進的な規模の拡大を目指すこと」の2つになると思います。
さらに行員の立場というか、行内との関係では、「働きがいのある群馬銀行にしよう」ということがあります。
これは、先ほどのサービスの質の向上ということと非常に密接に関係しています。働きがいというのはどういうときに感じられるかというと、お客さまに喜んでもらえたということが大きいだろうと思います。本来、仕事というのは、お客さまないし社会の役に立つから仕事で、そうでなければ給料はもらえないはずです。
お客さまのためになる、喜んでもらえるためには自分の実力も付ける必要があります。何も力がないのにお客さまの役に立つ訳はありません。先ほど申し上げた「サービスの質」が向上し、レベルが上がってお客さまの求めているものが提供できるようになれば、それは働きがいに結び付いてくるはずです。
それ以外の働きがいに関係することとして力を入れていることの1つに「生活のゆとり」があります。具体的には、時間外の削減や早帰り運動などを行っています。
早帰り運動は、その前からずっと言ってきてはいたのですが、ここ2年間ぐらいでかなり大きな成果があり、数字にも現れています。
時間外の削減は、必要のない残業は徹底して削減し、その代わりに、残業したらきっちり全部付けるということです。先ほどの人員を少し増加させるということも、そういうことと関係があります。過去に相当人員を削減にしたことによる皺みたいなものの解消も必要だろうと考えています。
さらに、長い目で見た場合、働き方の問題やサービスの質の向上という形のある目標のその奥に、「企業風土」というものがあるのではないかと思っています。
1人1人が自分の頭で考えて、遠慮なく発言をし、良いことであれば、それは若い人が言ったとか、どの人が言ったということでなく、取り上げられて、実現していく。そういう組織風土ですよね。
1人1人の行員が「サービスの質の向上」や「働きがい」などを実現していく成功体験の中からそういう「企業風土」が出来上がってくれば、新たな事態が発生してもそのこと自体が生きてきます。それはなかなか難しいことですが、気持ちの中では、本当はそれが最終の理想的な目標だと思っています。

CSRについて

<澁谷>

社会的責任活動について、先ほどもお話がございましたが、環境財団とか、環境探検隊とか、県民マラソンということでやられていますが、そういうところはいかがですか。

<四方頭取>

CSR活動の考え方については、3つの分類があるだろうと思います。
1つは本業そのものです。本業そのものは、先ほどの話ではないですが、社会の役に立つように、これをきっちりやる、本当の意味でお客さまの役に立つようにやるというのが一番根源的だし、一番大事なことだと思います。2つ目は本業に多少関連しますが、本業そのものではなくて、社会的責任というものを果たすのに役立つようなことがあります。3つ目は本業とまったく関係ないけれども、社会的責任という点で何らかの寄与をするということがあると思っています。
1番目は本業そのものですから、これはご説明しませんが2番目の本業に関係してというようなことについて、多少ユニークというか特徴的なものを2~3申し上げます。
1つは、投資信託の自然環境保護ファンドです。これは、尾瀬を地元にもつほかの地方銀行と共同で設定した投資信託で、信託報酬の一部を尾瀬保護財団の活動費として寄付するというものです。お客さまがこの投資信託をご購入いただければ、特に負担はせずに自然保護活動に寄与することになります。
それから、先ほどの『グッドライフマガジン』で、地元テレビを通じた金融情報、知識の提供ということがあります。
さらに、これもCSRと言ってよいと思いますが、金融犯罪への対応ということで、振り込め詐欺の防止があります。これはほかの金融機関でもやっていますが、当行が自負しているのは、かなり早い段階から相当踏み込んで、振り込め詐欺の防止については役割を果たしてきたという点です。
もう1つはビジネスマッチングです。これは一件毎に紹介する場合や、「ぐんぎん食の交流会」などのようにまとめて紹介するものなど、いろいろな形がありますが、これも地域の活性化という点で地方銀行ならではの貢献の形ではないかと思っています。
それから、「ぐんぎんビジネスクラブ」を去年からスタートしました。いろいろな情報提供や各種セミナー開催などが主な目的です。これは本業とかなり重なる部分がありますが、地域経済の活性化という点で地域の企業ができるだけ元気になっていくようにという意味では、社会的責任として地方銀行の果たしていける1つの役割なのかなと思います。
3番目の本業と関係ないものとしては、先ほどお話があった、群馬銀行環境財団の活動があります。これは、先ほどおっしゃったような環境問題に関する種々の啓発活動を行っています。
それから、群馬交響楽団への支援やバレー部による「ぐんぎんバレーボール教室」、県民マラソンの支援なども行っています。

女性の活用について

<澁谷>

御行での女性行員の方の活躍というのはいかがですか。

<四方頭取>

群馬県は、女性の活躍を生かす方策というのは他県に比べて少し遅れているのではないかと感じています。群馬銀行ももう少し努力の余地があると思います。
群馬県では昔から「かかあ天下」と言われており、群馬の女性というのは非常に働き者です。ただ、男性との関係では保守的なようです。県民気質として、女性活用が進みにくい県の1つのような感じがします。
群馬銀行では、数年前から女性の活用というのを言ってきて、今は住宅ローンセンター長は出ましたが、支店長は出ていません。早く支店長とか、ローンセンター長といったポストに女性が就いてくれることを願っています。銀行サイドも、もう少し頑張らないといけませんね。

若手行員へのメッセージ

<澁谷>

最後ですが、若い行員の方や、今、学生でこれから金融機関を目指そうとか、群馬銀行さんに入って、頑張ってみようという方々に対する、頭取として期待することやこうしてほしいということがございましたら、お聞かせください。

<四方頭取>

2つあります。
1つは、「自分の得意分野を持つこと」です。専門化、複雑化してきている金融業務の中では、幅広い視野で高い視点から見る能力を付けていくことも大事ですが、今の時代は得意技を持つということが必要です。これなら自分は自信があるというものをそれぞれに持ってほしいと思います。
もう1つは、先ほどの企業風土ということと関係があるかもしれませんが、言ってみれば、「変革の大きな勢力になってほしい」ということです。もちろん銀行全体としては、施策という形で変革が実現していくのですが、一緒にそれを支援する意味でも、伝統的な考え方の影響をあまり受けていない、新鮮な目を持っている若い人たちの参加意欲というようなものにぜひ期待したいと思います。
そういう意味では、「自分の頭で考えてほしい」ということです。要するに、大きな組織になればなるほど、規定や慣行、その企業での伝統的な考え方などがしっかりできています。それは、それなりに意味があるところもありますが、「そこはそうなっていることだから」ではなくて「そもそもどうなのか」というところを考えていかないと新しい時代には即していけません。そういう気持ちでやっていないと、すぐに疑問を持たなくなってしまうので、自分の頭で考えることがまず必要です。
その上で「リスクを取ってくれ」と言っています。組織をよくしていこうというときに、誰かがしてくれるだろうということではいかんと。何かを変えていくためにはリスクなしにできるものは世の中にはありません。自分の頭で考えて、こうだと思ったら、リスクを取ってトライしていくということが必要です。
そういうふうになってくると、先ほどの最終的な目標である「企業風土」というところが変わってくると思います。
多少ぶつかり合いながら、ある程度トラブルも生じながら、だんだん変えていかないと。いきなり頭取がそう言ったので、次の日から群馬銀行の企業風土が急に変わるとか、そんな甘いことは絶対にないです。

<澁谷>

頭取に長時間の話を伺うことができました。環境変化や、銀行の在り方、地方銀行の在り方、群馬銀行の在り方について非常に論理的にご説明いただいて、なるほど、そういうことだったんだなということで非常によく理解できましたし、勉強になりました。
サービスの質を高めるということとか、本当に私も納得させていただきました。
個人における相談機能の充実とか、法人の総合金融サービスもそうですし、出店戦略についても、ある意味、いいところに出ていく。やみくもに出ていくのではなくて、成長性や競合関係、リスクというようなことも考えて出店されるというのは私としても非常に勉強になりました。本当にありがとうございました。

(2007/08/28 取材 | 2007/11/16 掲載)