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全国地方銀行協会 福田 誠 副会長専務理事 インタビュー


全国地方銀行協会の組織とその役割について

全国地方銀行協会は地方銀行64行を会員とする社団法人であり、会員銀行に共通する問題に対処するため、主に次の活動を行っています。
(1) 会員銀行の代表者(頭取)をはじめ、各階層にわたる各種月例会議を開催し、金融制度・金融政策・当面の会員銀行にとっての重要課題などについて意見を取りまとめ、関係各方面へ提言を行っています。
(2) お客さまへのニーズに合った新しい金融商品・金融サービスの研究、ならびに経営の効率化に資する銀行業務・事務の改善・合理化策を検討し、推進しています。
(3) 内外の経済金融動向、銀行経営などに関する調査・研究、各種調査資料の収集あるいは作成を行っています。
(4) 会員銀行の役職員に対する各種研修を企画・実施しています。
(5) 会員銀行の共同事業である全国カードサービス(ACS)を管理・運営しています。
地方銀行を取り巻く経営環境について

<澁谷>

大手メガバンクとの競争が厳しくなるなか、地方銀行が持つ「強み」とはどのようなことでしょうか

<福田専務理事>

地方銀行は、これまで地域密着を経営方針として掲げ、中小企業や個人などの主な取引先との間で、長期にわたるリレーションシップを維持するなど、一定の地域に根差して経営を行ってきており、地域の実情を良く知っていることが「強み」の一つでしょう。また、長年の活動を通じて、「安心感」や「信頼感」あるいは「我が地域の銀行」といった、いわゆる「地銀ブランド」が醸成されていることも「強み」となるのではないでしょうか。

<澁谷>

中堅・中小企業、地域住民から求められる地方銀行の役割として、最も重要なことはどんなことでしょうか

<福田専務理事>

地方銀行に求められる役割は、人間の体で例えて言えば「毛細血管」のように、地域の隅々まで金融サービスを行き渡らせること-すなわち、「地域の金融ニーズに的確に応えていくこと」-と考えています。
とりわけ、大地を耕し、種を蒔いて育てていくような「農耕型」の金融機関として、地域に根差し、地域とともに生きる地方銀行としては、地域経済の活性化を図ることが、今求められる最も重要な役割ではないでしょうか。

<澁谷>

先に発表された「金融改革プログラム」が、中長期的な視点から地方銀行に与える影響はどのようなものでしょうか。

<福田専務理事>

金融改革プログラムは、銀行・証券・生損保を含む幅広い我が国の金融システム全体の改革を推進し、活力ある金融サービス立国を目指すための諸施策と理解しています。地方銀行にとって一番関心の高いリレーションシップバンキングについては、引き続き継続・拡充していくという方向となっていますが、リレーションシップバンキングは、地方銀行をはじめとした地域金融機関の基本的な経営そのものであり、これまで通りこの方向性の中で柔軟かつ迅速に対応するということになると考えます。
一方、改革プログラムの進捗により様々な制度改革、規制緩和が実施される結果、地域での競争激化や顧客ニーズの多様化・高度化が予想されることから、改革によって増えるであろう経営の選択肢を活用し、先ほど申し上げた「地銀ブランド」をより強固にしていくことが求められるのではないでしょうか。

<澁谷>

「ペイオフ全面解禁」は地方銀行にとって、どのような影響を与えたのでしょうか

<福田専務理事>

ペイオフ全面解禁については、決済用預金への預け替えの動きは一部に見られるものの、それ以外に目立った動きはなく、ごく平穏なスタートとなっています。また、決済用預金への預け替えの内容も、ほとんどが自行普通預金からの預け替えのようです。 その意味では、「ペイオフ全面解禁」に向け、地銀各行とも着実に準備を進めていたこともあり、影響はほとんどないと言って良いと思います。
今後については、金融機関経営が「平時」に戻ったとの認識の広がりから、金融改革プログラムにも言うように「安定」から「活力」へ向かって、地銀各行が地域に合った、特色のあるビジネスモデルを構築し切磋琢磨していく時代となっていくものと考えています。

<澁谷>

「リレーションバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」に基づく地方銀行における改善状況や現状はいかがでしょうか

<福田専務理事>

アションプログラムをきっかけに改めて組織をあげて取り組んだ結果、リレーションシップバンキングの推進態勢が一層整備されたほか、景気の持ち直しという側面もありますが、各行が各種再生手法を活用し事業再生に積極的に取り組んだ結果、不良債権が着実に減少するなど健全性向上が図られたと捉えています。
具体的には、①企業再生に向けた態勢の拡充、②多様な資金調達ニーズなどに対応できる態勢整備の進捗、③産官学の連携など、創業等のバックアップ体制の整備に加え、④地銀協での信用リスク情報の統合システム(CRITS)の構築や信用リスクに見合ったプライシングの推進など、リスク管理・収益管理体制が強化されたと捉えています。

<澁谷>

2006年末に適用される新BIS(国際決済銀行-自己資本比率規制の新基準)の地方銀行への影響はどうでしょうか

<福田専務理事>

まだ、告示の内容等細部が固まっておらず明確なことは言えませんが、これまで以上に信用リスクをはじめとした諸リスクのコントロールに対する市場やお客様の関心が高まることが予想されます。地方銀行は、全64行が共同してCRITS(信用リスク情報の統合システム)の構築など積極的な対応を進めており、こういった取組みが評価されればと思っています。
地方銀行に勤める方、目指される方に

<澁谷>

地域に密着した地方銀行に求められる人材とは、どのような人物像でしょう

<福田専務理事>

私自身が地方銀行の経営に直接タッチしているわけではないので、なかなか答え難い質問ですが、様々な新商品、新サービスが出てくるなか、お客様が地方銀行に期待するものが変わるにつれ、これまでの銀行のイメージも大きく変わっていく可能性も大きいと思いますので、経営感覚を持って、お客様のニーズや環境の変化に柔軟かつ大胆に対応できる人材が必要なのではないでしょうか。
一方、やはり銀行が「信用商売」であるという根幹は不変かと思いますので、やはり「地元の地域を良くしよう」という気持ちを持って、真摯に対応し、地域の皆様から信頼される人物が求められるのではないでしょうか。

<澁谷>

今働いている行員に一言

<福田専務理事>

日本経済は、少子高齢化という世界に類のない社会に突入しようとしており、そのなかで地域経済がどうあるべきか、非常に重要なターニングポイントに差し掛かっています。地方銀行は、何はともあれ地域の中核企業であることに間違いはなく、そのなかの一員として、(取扱う商品が大幅に増加するなか多忙だとは思いますが、)地域経済の活性化へ向け尽力することが、地方銀行の経営基盤自体を強化することにも繋がると考えています。
地銀64行による「信用リスク情報統合システム」CRITSについて

社団法人全国地方銀行協会では、金融庁が平成15年3月28日に公表した「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」、平成18年末より導入が予定されている「新BIS規制」への対応等を支援するため、会員銀行64行における信用リスク管理を一層高度化させるための取り組みを進めています。
 その一環として、平成11年5月から稼働している地銀共同の「信用リスク定量化共同システム」の機能を強化した新しい「信用リスク情報統合システム(CRITS=クリッツ)注」を平成16年12月から稼働させています。
(注)・本システムは、定量的な根拠のある合理的な貸出業務を運営するための地銀共同のインフラ整備として構築するものであり、①企業財務データベースの再整備、②財務スコアリングモデルの開発、③信用リスク定量化ツール提供の3大機能が有機的に統合したシステム
・CRITSとは「信用リスク情報統合システム」の英訳"Credit Risk Information Total System"の略
本システムは、平成15年春より、みずほ第一フィナンシャルテクノロジー株式会社および株式会社金融工学研究所の 2社をコンサルタントとして、あるべき共同システムの姿についての検討を行い、そのコンサル報告結果に基づき、現在、株式会社NTTデータとシステム構築を進めています。
本システム活用による、会員銀行におけるメリットは次の通りです。
信用リスクデータベースの整備や内部格付手法に対応したデフォルト率の推計など新BIS規制やアクションプログラム等への対応
財務スコアリングを利用した内部格付け体系整備
モンテカルロシミュレーションによる信用リスク量計測の精緻化
債権の流動化・証券化等を実施する際の共通基盤
2005年1月27日 日経金融