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『あたりまえ経営』が実践できる環境を整備するために

財務コンサルティングの意義

財務コンサルティング(以下「財務コンサル」)とは、経営資源「ヒト・モノ・カネ」のうち、「カネ」の部分に重点を置いたコンサルティングである。今回は、弊社コンサルタントが、財務コンサル導入の意義について解説する。

弁護士 中村健三 杉山 尚史
リッキービジネスソリューション株式会社
財務コンサルティング部長

平成5年に第一勧業銀行(現みずほ銀行)に入行後、都内・関東・関西圏の店舗で法人融資業務に従事。中小企業から上場企業まであらゆる規模・業種の法人を担当、法人新規開拓から不良債権管理まで幅広い業務を経験。

平成18年10月リッキービジネスソリューション株式会社へ入社
●財務コンサルティングとは

 「数値」という共通のものさしにより、経営を俯瞰し、現状把握をする。そこから経営課題を明らかにし、「課題解決のシナリオ」を策定する。そして、策定したシナリオの達成に向け、各種の経営改善支援を、経営企画スタッフの立場で行う。この現状把握から経営改善支援の実行までが、財務コンサルの仕事である。ここでいう経営改善支援とは具体的には、経営サイクルの定着化、組織活性化、銀行対応等を指している。

●『あたりまえ経営』―中小企業向け経営改善支援

 中堅中小企業(以下「中小企業」)向けの「経営改善支援」を行う上で、最も必要とされていることがある。それは、『あたりまえ経営』を実践できる環境の整備をすることだ。『あたりまえ経営』とは、

  • ①経営課題を的確に把握し、
  • ②解決の優先順位を定め、
  • ③解決に向けたアクションプランを策定し、
  • ④その内容を実行することである。

 これは文字通り、ごく「当たり前」の経営管理の流れである。このプロセスで経営を実践していて業績が低迷している企業を、殆ど見たことがない。しかしながら、この取り組みができる中小企業は、非常に少ない。そのため、実践できれば、れっきとした自社の強みとなる。ではなぜ、当たり前の経営管理プロセスを実行できない状況に陥っているのだろうか。

●「真の経営者」が必要な時代

 ライバル企業との競争激化、価値観が多様化する従業員の管理、コンプライアンス対応など、経営課題は増加し、また複雑化している。こうした事業環境の変化から、経営者の能力(スキル・精神力・リーダーシップ)は高いものが求められる。この経営者の能力を兼ね備えた人物を「真の経営者」とよぶ。かつてはこの「真の経営者」が不在でもなんとかやっていけた時代があった。しかし時代は刻々と変化しており、それ故に、経営者と一体となり課題解決をする、企業参謀的な人材の存在が必要なのである。ただしこうした人材が、中小企業には滅多にいない。そうしたマンパワーが不足する企業に望みはないのだろうか?

 現実的に、上記のような条件下でも、『あたりまえ経営』を実行し、毎期確実に良好な業績をあげる企業が存在する。経営環境(外部環境)や経営資源(ヒト・モノ・カネ)の状況には、どの中小企業も大差はない。違いは、外部人材(専門家・コンサル等)をうまく活用して社内をマネジメントしている点だ。

●「財務コンサルティング」の導入意義

 経営改善の2大テーマは「損益改善」と「資金繰り改善」である。前者は会社独自での取り組みが比較的容易である。しかし、後者は銀行との調整が必要であり、会社単独の取り組みは難しい。銀行に対し借入条件変更(リスケ)の協力を要請し、新たな返済計画について、全行の合意を得るためには、知識やスキルに加え、精神的な強さも求められる。これは多大な労力を要す。そこで、財務コンサルティング会社のような銀行取引に熟知した中立的な人間が求められるのである。  
 金融円滑化法の利用企業数は、推定30~40万社。うち、倒産予備軍は5万社前後と言われている。根本的な再生を果たした企業はごくわずかであり、経営改善を必要とする企業数は相当数にのぼる。経営改善を必要とする会社は、身近に銀行取引に熟知した「外部専門家」や「財務コンサルタント会社」があれば必要に応じて活用することをお勧めしたい。

※金融機関ドットヨム12号14ページに記事が掲載されています。