TOP > 連載 > これからの銀行を支えるIT戦略

はじめに|これからの銀行を支えるIT戦略

著者:株式会社電通国際情報サービス 飯田

ITの戦略的活用

2004年12月に金融庁より公表された「金融改革プログラム -金融サービス立国への挑戦-」において、「ITの戦略的活用」が重要な施策の一つと位置づけられました。金融インフラの整備に関しては、電子決済、電子金融取引が主要課題とされ、個別の金融機関に関しては、IT投資の効率化とITによる顧客利便性向上が主要テーマとして取り上げられています。装置産業とも言われる銀行業において、ITの活用自体は今に始まった話ではありません。それを「金融改革プログラム」が敢えて主要施策として取り上げた要因は何でしょうか?

表面的には、IT投資の非効率性が利用者ニーズに合ったサービス提供を阻害しているのだと読めます。しかし、その実体を考えてみると、金融ビジネスそのものの変化にIT投資が追いついていないという現実が浮かびあがってきます。

金融業界においては、銀行・保険・証券といった業態の垣根が低くなるなか、これまでのように金融商品の開発から顧客への販売、そしてその一連の管理プロセスまでを個々の金融機関が担う方法では競争に勝ち残ることが難しいと言われています。すると、販売に特化した金融機関、あるいは商品提供に特化した金融機関というように、特定の機能を強化した組織が求められる可能性があります。こうした金融機関の戦略の変化は、それを支えるIT戦略の変化を伴わずには現実のものとはなりません。

制度対応

戦略的なIT投資が求められる一方で、個人情報保護法新BIS規制のように、時限性をもって対応を迫れれる制度対応案件もあります。制度対応は、相応のIT投資を伴うものの、それ自体が収益向上に繋がるものではありません。従って、各金融機関は、今後のマーケットにおけるポジショニング戦略に基づいて、適切な対応方針を策定することが必要です。

連載の内容

こうしたITを取り巻く環境変化を見据え、当連載では金融戦略と制度対応の2つの観点から、特に関心が高いと思われる分野に的を絞り、IT活用のポイントを議論します。 金融戦略の観点からは、融資業務とリテール業務を、また制度対応の観点からは個人情報保護法、新BIS規制、日銀ネット高度化を取り上げます。また、ITベンダーの観点から、様々なシステム構築の実績や経験、ITソリューションの紹介も織り込んでいきたいと考えています。