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ミャンマー経済開放の"今"

一般社団法人日本ミャンマー文化経済交流協会 理事長 井畑 敏氏

携帯市場の新時代が始まる

(注)2012年、国際電気通信連合(ITU)資料などを参考に作成
日経電子版より抜粋

  2014年9月1日朝、私が住むコンドミニアム1階の携帯電話ショップ前に、若いミャンマー人の男女が50mほどの行列をつくっていた。彼らの目的はSIMカード。これまで200~250US$、経済開放前の軍政のころは1,500$もしていたのが、1.5$(約150円)という安さで販売開始されたためだ。販売元は日本のKDDI。ミャンマー郵電公社(以下MPT)と共同事業を開始し、SIMカード4万枚(今後40万枚まで拡大)を販売する。この参入により今秋、ミャンマーの携帯電話市場は、カタールのOoredoo、ノルウェーのテレノール、そしてミャンマーと日本のMPT+KDDI、の3社による新時代に突入した。

日本企業、入札に敗れる

 実は話は昨年2013年に始まった。ミャンマー政府は、それまでMPTが100%独占していた携帯電話市場の開放を決定し、免許入札を実施した。そこに日本のKDDIや英ボーダフォンなど12社の国際企業連合が入札に参画したが、2013年7月に選出されたのはカタールのOoredoo、ノルウェーのテレノールの2社であった。これだけ日本政府、企業がミャンマーに力を入れている中、日本では「なぜKDDIが選出されなかったのか」と一つのショックとして話題となった。私もKDDIが内定したとの噂さえ聞いていたので、驚いたのを覚えている。

ミャンマー携帯ショップ

 その後、MPTは外国2社との競争に備えて、海外ノウハウを自体内に取り入れることを決め、提携会社を探し始めた。ここにKDDI、住友商事、それに日本政府が大きく働きかけたのである。この結果、今年7月17日、正式にMPTとKDDI、住友商事(実際は2社の合弁会社)は共同事業運営契約を結び、9月に営業を開始した。すでにSIMを発売し、営業を開始していたカタールのOoredoo、ノルウェーのテレノールに遅れること1か月での参入となった。

 ミャンマー政府は2016年までに携帯普及率を80%にまで高めていくとの目標を発表している。KDDIはすでに700万人のユーザーを持つMPTの優位性を獲得し、今後はMPTとの通信事業に2兆円をつぎ込む予定だ。Ooredooも1兆円規模の投資を計画しており、人口5100万人(今年の国勢調査で判明)のうち、いまだ20%にも満たないミャンマーの携帯市場を巡り、3社の本格的な競争が始まる。

金融市場の開放

ヤンゴン市内 ヤンゴン中央駅を望む

 携帯市場以外にも、ミャンマー政府は今まで規制してきた2つの市場を開放する。

 1 つ目は金融である。ミャンマー政府は今まで規制してきた外資金融機関の営業を認める決定をした。ミャンマーに営業所のある外資金融機関に申請案内を送付、申請のあった30行のうち、25行を選考候補として発表したのだ。その中には日本の3メガバンク(三菱東京UFJ、三井住友、みずほ)をはじめ、オーストラリア・ニュージーランド銀行、中国商工銀行などアジアを中心に世界の銀行が含まれていた。

 今回開放を認めるのは法人対象の業務と支店1店の設置のみ。しかし各国企業の進出を援助する意味でも、外資金融機関には大きな一歩だ。許可は25 行のうち10行以下と言われていたので、日本の3 行が全部入るのは難しいとみられていた。しかし、9月29日に発表された認可行9 行の内訳は、シンガポールが2行、タイ・マレーシア・中国・オーストラリアが1 行ずつ、そして日本の三菱東京UFJ、三井住友、みずほの3行であった。日本が3分の1を取ったことになる。これは、日本の3行の実力と、今後の日本企業のミャンマー経済への貢献が評価された結果であろう。

流通の外資開放

ショッピングセンター

  2つ目は流通業である。これまで外資系小売企業は、現地の代理店などを使って営業するしかなかったが、この度ミャンマー政府は、大型ショピングセンタ-をはじめとする一般の小売業、卸売業、倉庫業などで外資のみの企業営業を認めることとなった。早ければ年内にも一部可能になる。

 イオンは既に2016年のショッピングセンター進出を計画しており、現在は金融子会社で消費者への割賦販売金融を開始している。今回の規制緩和で、ミャンマーにはまだないコンビニなど、日本の小売業の進出が期待される。

ミャンマーマンゴー日本進出

 ミャンマーの果物は豊富で安いが、その中で私が気にかけていたのがマンゴーだ。マンゴーにも色々あるらしいが、中でも「ダイヤモンド・マンゴー(ミャンマー名:セインタロー)」と言うのが実に美味しく、そして安い。他のミャンマー産マンゴーより価格は高いが、それでも大人の手のひらサイズで50円ほどである。

ヤンゴン市内の憩いの場 ガンドージ・レイク

 私の子供時代、バナナは高級品だった。そう簡単には食べられず、食べたときには実に美味かった。当時は、病院の見舞い品などによく使われていたのを思い出す。それがフィリピンをはじめとする諸外国から大量に輸入されるようになり、本当に手軽に食べられるようになった。きっとマンゴーも同じであろう。そう思っていたら、この度、日本の関係団体がダイヤモンド・マンゴーの輸入に向けてミャンマーの農家と協議を始めていると聞いた。さすがもう眼をつけている企業がいる。そしてこの10月、ダイヤモンドマンゴーの価格が250円に跳ね上がっていた。

◆井畑 敏(いはた さとし)
1973 年米国コネチカット州ハートフォード大学でMBAを取得後、帰 国後経営コンサルタント業などを経て、1982 年米国で当時スタート したファイナンシャルプランナー事務所を日本で最初に立ち上げる。
1985 年、ダイヤモンド社と共に、日本FP 協会を設立。AFP・CF P資格制度を日本で確立させた。また、財団法人ロングステイザイダン の理事も歴任、ロングステイアドバイザー制度の導入にも尽力。近年は 発展が著しいミャンマーへの交流のため、2012 年日本ミャンマー文化 経済交流協会を立ち上げ、日本企業のミャンマー進出を後押ししている。
■ミャンマーに関するお問い合わせ先
一般社団法人日本ミャンマー文化経済交流協会 TEL: 03-5545-5923 mail: staff@lifeplus.asia URL: www.j-myanmar.jp