第2回 減損会計の意義と課題|商務・財務・会計[銀行員ドットコム]
減損会計とは、固定資産の減損処理のことであり、主として土地・建物等の事業用不動産について、収益性の低下により投資額を回収する見込みが立たなくなった帳簿価額を、一定の条件のもとで回収可能性を反映させるように減額する会計処理です。
平成15年10月31日に企業会計基準委員会から「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」が公表され、平成17年4月1日以後開始する事業年度から減損会計が適用されることとなりました。
その内容は、企業保有の固定資産の収益性が著しく低下し、資産価値が帳簿価格を大幅に下回った場合に、将来の一定期間の予想収益と帳簿価格との差額の損失計上を義務づける会計制度です。本社や支店の土地・建物・工場設備など企業保有の事業用資産と、賃貸ビルなど投資不動産が対象です。経営環境が急速に悪化したり、市場価格が大幅に下落したりした場合に「減損の兆候」とみなし、減損処理の必要性を判断し、特別損失として計上するなど、企業の経営実態を財務諸表に反映させます。
そもそも減損会計は、いわゆる「会計ビッグバン」の産物である新会計基準(退職給付会計、税効果会計、金融商品会計等)と比較して、格段に経営者の判断と見積りに委ねる部分が非常に大きくなっています。減損会計適用の資産のグルーピング、そこから生ずる将来キャッシュ・フローの見積り、また、割引率の見積りなどの各段階において、経営者の恣意性が入る余地が十分にあります。
そのため、適用方法いかんでは減損会計の適用が実質的に回避されてしまう場合も考えられます。様々な業種、様々な形態の会社があるなかで、例外の余地のない画一的な基準の構築は不可能なのですが、財務諸表作成の根本的な目的に立ち返れば、減損会計には、企業の将来の舵を取る経営者に対して、その判断と見積りについての自主性を持たせ、判断と見積りの過程について一定の開示を要求することにより、経営者の経営に対する誠実さと経営管理能力を問うという意義があります。そうはいっても、減損会計は結果として含み損を処理する体力のない企業の整理、再編を促す効果を秘めています。
しかし、これについても、経営者が企業の保有する経営資源をどこに注ぎ、それによってどれだけの収益を生み出すか、つまり、選択と集中による資本効率の向上が企業価値の向上において必要不可欠であり、企業の舵取り役である経営者の今後の課題であるといえるでしょう。