第3回 簡易企業再編行為の商法上の規制|商務・財務・会計[銀行員ドットコム]
現在、M&Aに取組む企業は大企業だけにとどまりません。中堅・中小企業においてもM&Aを市場占有率の拡大、資金調達力の強化、経営合理化等の経済戦略の一つとして考えられるようになってきました。M&Aはもはや大企業特有の特殊なものではなく、極めて一般的な経営戦略の一つとして認識されていると言えるでしょう。
また、商法においてはここ数年間にわたり、特に企業再編にまつわる改正が繰り返されてきました。そこで今回は、いわゆる簡易企業再編行為の商法上の規制について考えてみましょう。
企業再編の手法には、合併・株式交換・会社分割等の手法がありますが、いずれも既存株主への影響が大きいため、その意思決定には株主総会の特別決議を要求されています。しかし、既存株主への影響が小さい場合には、より簡易な手続き(取締役会決議)による企業再編を認められているのです。これにより、迅速な意思決定、株主総会開催等に伴うコストの削減が可能となります。
簡易企業再編行為には、簡易合併、簡易株式交換、簡易分割の3つの手法があります。以下の内容の要件を具備している場合は、業務執行に準じるものとして取締役会決議による企業再編行為が可能となるケースです。
1. 簡易合併
1.存続会社の発行する新株数が発行済み株式総数の5%以下で
2.合併交付金の額が最終のB/S の純資産額の2%以下で
3.存続会社株主の6分の1以上が反対しない場合
2. 簡易株式交換
1.完全親会社となる会社の発行する新株数が発行済株式総数の5%以下で
2.株式交換交付金の額が最終のB/Sの純資産額の2%以下で
3.完全親会社となる株主の6分の1以上が反対しない場合
3. 簡易分割
分割会社においては、物的分割の場合に限って簡易分割が認められています。
1.物的分割であって
2.承継財産の簿価が分割会社の最終のB/S上の資産額の5%以下である場合
(新設分割の場合の新設会社には会社が存在しないため、このような簡易手続きはありません。)
承継会社においては、実質的には吸収合併における存続会社と同じため、簡易合併と同様の手続きとなります。
1.承継会社の発行する新株数が発行済株式総数の5%以下で
2.分割交付金の額が最終のB/Sの純資産額の2%以下で
3.承継会社株主の6分の1以上が反対しない場合