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第7回 制度融資、保証制度を活用して借金力をつける|『借金力』をつけるにはどうしたらよいか

著者:リッキービジネスソリューション株式会社 代表取締役 澁谷 耕一

今回は、民間金融機関からの融資を補完する役割としての制度融資や保証制度、また貸出条件変更についてお話したいと思います。
ご案内の通り、昨年9月の金融危機に端を発する世界同時不況の荒波にもまれ、特に中小企業は業績的にも、資金的にも窮地に立たされる局面を迎えました。 そこで、政府、日銀は矢継ぎ早に企業の資金繰り支援策を打ち出してきています。 特に、中小企業に対しては、手厚い制度が盛り込まれ、中小企業庁は、平成20年10月1日より、日本政策金融公庫を活用したセーフティーネット貸付を、同年10月31日より、全国保証協会を通じた緊急保証制度をスタートさせています。

日本政策金融公庫によるセーフティーネット貸付は、経営環境の変化等により資金繰りに困難をきたしている事業者を対象として、3つの対応資金が用意されています。

1:売上低下、収支悪化に伴う資金繰り悪化を安定させ、資金繰り倒産の防止を図ることを目的とし、一時的に売上の減少等業況悪化をきたしているが、中長期的にはその業況が回復し発展することが見込まれる事業者を対象とした運転資金、設備資金です。中小企業事業(旧中小企業金融公庫対象案件)は7億2000万円、国民生活事業(旧国民生活金融公庫対象案件)は4800万円を上限としています。

2:金融環境変化対応資金 金融機関の貸し渋り、貸しはがしに伴う資金繰り悪化を安定させ、貸し渋り倒産の防止を図ることを目的とし、金融機関との取引状況の変化により、一時的に資金繰りに困難をきたしているが、中長期的には資金繰りが改善し経営が安定することが見込まれる事業者を対象とした運転資金、設備資金です。上記1の経営環境対応資金とは別枠で、中小企業事業は3億円、国民生活事業は4000万円を上限としています。

3:取引企業倒産対応資金 取引企業の倒産に伴う資金繰り悪化を安定させ、連鎖倒産の防止を図ることを目的として、取引企業などの倒産により経営に困難をきたしている事業者を対象とした運転資金です。

上記1、2とは別枠で、中小企業事業は1億5000万円、国民生活事業は3000万円を上限としています。
また、日本政策金融公庫では、公庫取引企業の複数口にまたがる借入を一本化し、年間返済額の低減を図ることにより資金繰りを安定化させることを目的とし、経営環境変化対応資金または金融環境変化対応資金の貸付を受ける事業者を対象に、当該貸付資金を上限として借換に応じる「公庫融資借換特例制度」を設けています。
他にも、特別貸付として、新たな事業を開始する事業者、または異業種、異分野への進出を計画している事業者に対する「新企業育成貸付」、企業活力促進のために積極的な設備投資等を行う事業者に対する「企業活力強化貸付」、環境対策に取り組む事業者に対する「環境・エネルギー貸付」、事業再編に取り組む事業者に対する「企業再生貸付」等を用意しています。
更に、上記「新企業育成貸付」または「企業再生貸付」を利用する事業者が、地域経済の活性化のために、一定の雇用効果が認められる事業、地域社会にとって不可欠な事業、技術力の高い事業に取り組む場合、「挑戦支援資本強化特例制度」という劣後ローン制度を活用することが可能です。
劣後ローン制度とは、劣後ローンを擬似資本と見做し財務の安定化を図ることを目的としており、上限2億円、無担保無保証、15年間の元金返済据置の運転資金、設備資金であり、適応金利も利益水準に応じて3段階に設定されています。
特に、キャッシュフローは出ているものの、債務超過あるいは過小資本の事業者が適用した場合、金融機関の信用格付を改善できる可能性があることから、金融機関にとっても支援が行いやすくなるほか、事業者としての資金繰りの安定化を目的としても活用できる制度です。

一方、緊急保証制度は、取引先等の再生手続等の申請や事業活動の制限、災害、取引金融機関の破綻等により経営の安定に支障を生じている中小企業者を対象としたセーフティーネット保証を拡充し、対象業種を大幅に拡充した保証制度です。
従来の信用保証協会による、責任共有制度(平成19年10月より、従来の同協会による100%保証を金融機関が原則20%責任分担することとした制度)とは別枠として、同協会が融資額の100%を保証するというものです。
保証枠は、現在30兆円に拡大され、対象業種も781業種と、約80%の中小事業者をカバーしており、中小企業の資金繰り対策として、非常に有効な制度として活用されています。
責任共有制度の下での一般保証枠8000万円(無担保の場合)とは別枠として、上限8000万円(無担保の場合)まで保証を受けることが可能であり、担保がある場合には、一般保証枠2億円とは別枠で、上限2億円まで保証を受けることが可能です。
保証付債務の一本化など借換需要にも対応していることから、年間返済額の低減を図ることにより資金繰りを安定化させることにも活用いただけます。

尚、こうした制度融資を積極的に活用することとあわせ、金融庁は、監督指針および検査マニュアルを改定し、平成20年11月7日付けで「中小企業向け融資の貸出条件緩和が円滑に行われるための措置」を実施しています。従来では、資金繰りを安定化させるために返済条件の変更が行われた場合、金融機関の債務者区分が引き下げられ、要管理債権以下、いわゆる不良債権として認定されるケースが太宗であったことから、銀行としても対応に躊躇せざるを得ない状況でしたが、今般の措置により、貸出条件緩和(※)が行われた場合においても、不良債権として認定しない取扱を拡充したことにより、金融機関としても、より柔軟に貸出条件緩和に対応する姿勢に変わってきています。
(※)具体的には、金利引下げ、金利・元本の返済猶予、返済期限の延長、債権放棄、など債務者にとって有利となる取り決めをおこなうこと。

具体的には、従来、不良債権にならないためには、「抜本的な経営再建計画について『概ね3年後の債務者区分が正常先になること』」を要件としていましたが、改定に伴い、『概ね5年(最長10年)後に正常先になること(計画終了後に自助努力により事業の継続性を確保できれば、要注意先であっても差し支えない)』という要件に緩和しています。
尚、返済条件変更に際しては、原則的に十分に検証された経営再建計画の策定が求められることから、可及的速やかに、メイン銀行など主力金融機関とも相談をし、場合によっては、外部機関(コンサル会社、各県の再生支援協議会等)とも連携し、納得感のある計画書を策定する必要があります。

(2009/8/28 掲載)