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第8回 鳥の目、虫の目、魚の目|『借金力』をつけるにはどうしたらよいか

著者:リッキービジネスソリューション株式会社 代表取締役 澁谷 耕一

今回は、企業経営者に求められる「三つの目」についてお話したいと思います。 「三つの目」というのは、1.鳥の目、2.虫の目、3.魚の目のことです。
「鳥の目」というのは、政治情勢、経済環境、社会システムなどマクロ的な状況変化を捉え、大局的な視点から全体の流れを押さえ、事業の方向性を判断する目です。 現在の経済環境は、国内情勢にとどまらず海外情勢とも緊密に結びついている状況であり、政治、経済、金融、社会情勢など、グローバルな視点から、常に企業への影響を予測しておかなければなりません。
そうした情勢を踏まえ、例えばメーカーであれば、製品の販売戦略、価格戦略等を策定し、場合によっては、大胆な戦略転換を仕掛けていかなければなりません。 他にも、資金調達戦略、人事戦略、内部管理体制戦略など、多岐にわたる角度からのアプローチが必要であり、時間軸の要素も加味した形で、中長期的なシナリオ策定と、その修正作業を常に繰り返していく必要があります。
「虫の目」とは、それぞれの策定された戦略において、具体的にどういう戦術、プロセス体制のもとで、その戦略を事業として具現化していくかといった視点です。 大きな流れを捉えていたとしても、抽象的な方向性や方針だけでは、具体的なアクションには落とし込めません。
企業のおかれている現状認識を踏まえた中で、規模、体制、人材、財務面などから、現実的かつ綿密なプランニングを立て、計画に沿って着実に遂行していくことが求められます。
最後の「魚の目」は、「鳥の目」、「虫の目」を研ぎ澄ます中で、その変化、転換点を素早く見極め、その変化に対応した行動に繋げていくための目、つまり潮目を読み取る目です。
大きな情勢変化のみならず、企業に起因するなんらかの想定し得なかった要因等から、これまでの戦略や戦術を180度見直さなければならない局面もでてきます。 そうした時に、それが一過性の要因なのか、そうでないのかどうかという判断を瞬時に行い、その判断に従った決断力と実行力が求められます。 そのためには、過去の経験や有識者の意見などが大きく影響すると思いますが、常に柔軟な対応力を備えておくことで、躊躇なく行動を起こすことが肝要であると思います。

尚、この「三つの目」は、企業経営者にとどまらず、金融機関の融資営業担当者にも不可欠な要素であると言えます。
言い換えてみれば、「鳥の目」=「エコノミストの目」、「虫の目」=「アナリストの目」、「魚の目」=「コンサルタントの目」ではないかと思います。
残念ながら、現在の銀行員は、毎年度、高い収益目標、多様な金融商品、複雑化する事務・管理体制の三重苦の中で、じっくりと企業と向き合って、こうした複眼的な視点から企業をサポートしていくという余裕がなくなってきている気がします。 ただ、企業から銀行の営業担当者に求められる資質は、大局的な視点から、企業の実態を理解し、どこを伸ばし、どこを改善していくべきなのかといった適切なアドバイスを行えることではないかと思います。
つまり、内外の経済情勢、金融情勢等の流れを読み取り、企業の進むべき方向、方針を指南する「エコノミストの目」、業界情勢や、業界におけるポジショニングを踏まえた企業の実力分析や経営者の資質・能力を見極め、具体的なアドバイスを行う「アナリストの目」、そして、企業経営者の相談相手となり、企業の財務、組織面等における経営課題を的確に捉え、解決に導く「コンサルタントの目」という機能が求められているのではないでしょうか。
金融機関の営業担当者の多くは、入行した時には、「企業に対して、金融機関の有する機能を活用して、企業の成長を支援し、ひいては地域の向上に貢献したい。」等といった、大きな夢と期待をもっていたはずです。是非、その夢を忘れず、金融機関という他の業種では味わえない醍醐味を一つでも多く経験できるように、この「三つの目」をいつまでも忘れずに実践し続けていただきたいと思います。

(2009/9/4 掲載)