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第4回 民事再生手続とは|取引先倒産!そのとき[銀行員ドットコム]

金融業務に携わる人が、最も多く関係する倒産形態はおそらく、民事再生でしょう。民事再生については、詳しく列挙していきたいと思いますが、ここでは、大きな流れとその仕組みについて掲載します。ポイントは、和議よりも更に申請しやすくなったことに加え、

(1) 破綻原因が生じる前でも手続き可能!
(2) 取締役全員の同意が必要ない
(3) 申請後の提携先や担保売却が比較的容易
(4) 和議と同様に債権者の同意が得られれば経営者はそのまま経営者で残ることが可能
という点があげられます。

法律的には、和議は詐欺法と言われた倒産したもの勝ちの要素は内包しており、金融機関泣かせの法律ですが、「敵を知り己をしらば百戦危うからず」です。民事再生を知っておけば、今後の、稟議書を通すためでない、実践的な保全が可能になるといえます。

民事再生の法的定義

  • 「債務者が業務遂行及び財産の管理処分を原則として継続しつつ、債権者の法定多数の同意により可決された再建計画に基づいて、事業や経済生活の維持再生を図る手続」
  • 民事再生法の施行により、和議法は全面的に廃止されました。ここでは、和議との相違点を挙げながら、その仕組みを述べていきましょう。

【1】 手続開始の原因

  • 和議の開始原因が破産原因と同一である点を改め、破産原因が生じる前の時点での手続開始を可能としています。これは、例えば、資金繰り破綻のおそれがあるとか、実質債務超過になり、金融機関の支援が得られなくなく可能性があるという、「破綻の可能性」を根拠に民事再生が申請出来ることになった訳で、金融機関としては、業績不振先について、常に「民事再生申請」の可能性を頭の隅に置いておかなければならないと言えましょう。」

【2】 申立権者

  • 和議法が和議の申立について、法人の場合に取締役等の全員一致を必要としている点を改め、取締役等の全員一致の申立は必要なくなりました。

【3】 手続開始前の保全処分

  • 債務者の業務及び財産に関する保全処分のほか、監督委員による監督、調査委員による調査、保全管理人による管理命令の発令が可能。
  • 破産手続等の他の手続の中止命令の発令ができる。
  • 再生手続開始決定の前後を問わず、担保権の実行としての競売手続の中止命令の発令ができる。

【4】 担保権の消滅請求

  • 債務者等は、再生手続開始決定後、担保権の目的財産が債務者の事業継続に欠くことのできないものであるときは、裁判所の許可を得て、担保権の目的である財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して、債務者の財産の上に存する担保権を消滅させることが可能。

【5】 監督機関の一本化

和議には、更生管財人のような管理機関がない点を改め、整理委員と管財人との二重構造を改正
  1. 監督委員
    裁判所は必要に応じ、債務者が一定の行為をすることについて同意を与える権限を有する監督委員を選任出来る。
  2. 債権者委員会の承認
    再生債権者全体の利益を適切に代表すると認められる場合、裁判所は債権者委員会が再生手続に関与することを承認できる。
  3. 管財人
    裁判所は、法人債務者の財産管理及び処分が失当であるとき、その他債務者の事業の継続のため、特に必要があると認められる場合、債務者の意見聴取後に管財人を選任できる。

【6】 再生債権の確定手続-和議にはなかった債権届出確定制度を設置

  • 異議のある再生債権者は、債権調査期間の末日から1月以内に裁判所に債権内容の査定の申立ができ、裁判所の決定に異議がある者は、決定後1月以内に裁判所に異議の訴えが可能。

【7】 再生計画の内容及び決議の成立要件

  • 再生計画によって債務の期限が猶予されるときは、その債務の期限は原則10年以内でなければならない。
  • 再生計画を可決するには、議決権を行使できる出席債権者数の過半数及び議決権を行使できる届出債権者の議決権額の1/2以上の同意が必要。つまり、金額と債権者数ともに過半数で可決されるということです。

【8】 再生計画の履行確保

  1. 監督委員が選任されている場合、再生計画遂行時又は再生計画認可決定確定後3年経過する迄。
  2. 管財人が選任されている場合、再生計画遂行時又は再生計画が遂行されることが確実であると認めるに至る迄、手続は終了しない。つまり、以前の和議に比べると履行確保に関して、チェック機能が働くということになります。