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第2回 連結決算における全部連結と持分法|銀行員が知っておきたい会計話

著者:公認会計士 井口 秀昭

設例:持株比率60%としたときの全部連結と持分法の連結財務諸表の相違

【1】 損益計算書(P/L)【2】 貸借対照表(B/S)

解説:子会社は全部連結、関連会社は持分法が適用される

最近は、連結決算が大変重要視されています。財務諸表の開示は連結中心になっており、銀行員も連結が分からなければ話になりません。今後の財務諸表分析は連結決算が中心となりますので、この連載においても連結決算に関するテーマをいくつか取り上げる予定です。その中で今回は子会社と関連会社では連結決算における表示の仕方がどのように変わるのかということを説明します。

連結決算はいうまでもなく、親会社を中心にして、子会社・関連会社の業績をグループとして一体表示する手続です。親会社の支配力が認められる会社は子会社として全部連結され、親会社の影響力があると認められる会社は関連会社として持分法が適用されます。

以下では単純化された設例を用いて、全部連結と持分法の表示の相違を説明します。ここでは、親会社が当初資本金(純資産)100の会社の株式60%を60で取得し、子会社化したと仮定します。そのとき、全部連結と持分法では連結決算がどのように変わるのか見ていきます(本来、60%であれば子会社として全部連結されますが、ここでは全部連結と持分法の相違を表現するために、持分法での取り扱いも60%の持分として表示します)。

損益計算書

【1】は損益計算書です。子会社個別の損益計算書は(2)のとおりの実績だったとします。この子会社を全部連結したときの連結損益計算書は(3)のようになります。全部連結では文字通り、売上高から法人税等まで子会社の損益計算書を全部そのまま親会社と連結します。100%子会社であれば、子会社の業績はすべて連結に取り込みますから、これで終わりで構いません。しかし、この子会社は60%子会社ですから、連結の利益に貢献するのは子会社の利益の60%分だけであり、40%は除外しなければなりません。したがって、子会社の当期純利益の40%分の24は親会社以外の少数株主に帰属する利益という意味で、"少数株主利益"として連結の利益から控除されることになります。その結果、最終的に連結に取り込まれる利益は子会社の獲得利益の60%分である36ということになるわけです。もし逆に、この子会社の損益が赤字であれば、子会社の赤字が100%計上されてしまいますから、"少数株主損失"として40%の利益を加算することになります。

一方、この子会社を持分法として連結すると、連結損益計算書は(4)のようになります。持分法は最終的な子会社の利益貢献額のみに着目します。この例でいえば、子会社の最終利益は60で親会社の持株比率は60%ですから、連結における利益貢献額は60×60%=36ということになります。持分法では、子会社の売上以下の途中経過は一切無視して、この最終的な利益貢献額だけを取り出して、連結損益計算書の営業外収益で"持分法による投資収益"として計上することになります。もし逆に子会社の損益が赤字であれば、連結損益計算書の営業外損益で"持分法による投資損失"として持分に応じた赤字額を計上することになります。

貸借対照表

【2】は貸借対照表です。(1)の親会社個別の貸借対照表には取得した子会社株式60が計上されています。(2)が子会社個別の貸借対照表です。当期純利益分の60だけ資本勘定が増加しています。

全部連結した貸借対照表は(3)のようになります。全部連結では(1)の親会社と(2)の子会社を合算しますので、資産・負債は親会社だけではなく、子会社分も連結決算に反映されます。ただし、親会社と子会社の重複勘定は相殺消去しなければなりません。したがって、親会社所有の子会社株式60と子会社当初資本勘定100のうち60%分は相殺します。残りの40%分の40は少数株主持分となります。その結果、子会社株式を取得したときの子会社資本100は連結上の資本にはなりません。当期純利益60のうち40%分はやはり少数株主持分となりますから、結局子会社資本のうち、連結上の資本として加算されるのは、子会社が獲得した利益のうちの親会社持分に相当する36だけということになります。この金額は連結損益計算書の当期純利益の額と対応します。

次は持分法です。持分法では子会社株式の持分が増加した分だけ、親会社が所有している株式勘定の価値を増加させます。当初、親会社が子会社に60%資本参加したときの子会社の純資産は100でした。その後、子会社が利益を獲得した結果、当期末では子会社の純資産は160に増加しています。親会社の持株比率は60%で変わっていませんから、親会社の持分は160×60%=96になっています。つまり、親会社の所有している子会社株式の価値が60から96に増加したわけです。そこで(4)の持分法では、子会社の資産・負債は合算せずに、子会社株式勘定の価値を増やし、同額資本勘定を増加させるのです。この増加額36は連結損益計算書の持分法による投資収益額と対応します。

全部連結と持分法の相違

さて、それでは全部連結と持分法の相違はどこにあるのでしょう。上記の説明で分かるとおり、損益計算書の当期純利益、貸借対照表の資本勘定は全部連結でも持分法でも変わりません。当期純利益と資本勘定は決算書の最終結果といえるものですが、その点において両者は変わらないのです。ただ、そこに至る過程は大分違います。

全部連結では100%連結してから、少数株主持分を控除するのに対し、持分法では最初から親会社持分だけを加算します。たとえば、損益計算書では、全部連結は売上高や税引前当期利益、法人税等までフルに子会社業績が加算され、最終直前の少数株主利益でその持分が調整されるのに対し、持分法では最初から親会社持分に応じた収益が持分法による投資収益として計上されるに過ぎません。その結果、親会社の持株比率の低い、業績のいい子会社を全部連結すると、連結上の営業利益や経常利益はその持分に比べれば過大に計上されることになります。貸借対照表でも、全部連結では子会社の資産・負債が合算されますから、業績のいい子会社を全部連結すれば、見栄えがよくなります。業績が悪ければ、当然逆になります。

最近は連結決算で企業の財務状態を判断します。経常利益、有利子負債、自己資本比率などは連結で評価されますから、関係会社が全部連結になるか、持分法になるかの違いは重要です。