第7回 情報の非対称性(ギャップ)は解消できるのか?|金融リテラシー調査
投資家と金融機関の間には情報の非対称性(ギャップ)が根源的に存在します。裏返せば、情報の非対称性によって金融機関は収益をあげているともいえるでしょう。しかしながら、金融商品取引法は「適合性の原則」や「事前説明の義務」によって、こうした非対称性を解消することが大きな目的になっています。
投資家の知識や経験などに応じて、いかにわかりやすい形で要領よく商品やサービスのポイントを説明できるかが、金融機関の販売担当者に問われています。「リテラシー・マーケティング講座」の狙いは、まさにこの点にあります。
果たして、情報の非対称性は解消できるのでしょうか。答えはNOであり、YESなのでしょう。投資家との間に存在する情報ギャップはすべて解消できないとしても、販売前に最大限解消する努力をすべきだし、販売後も運用報告書など、アフターフォローを通じて解消の努力を続けるべきでしょう。
『金融リテラシー調査』によって、投資家に伝わっていること伝わっていないことがはっきりしてきました。また、投資に成功するために必要なリテラシーも浮かび上がってきました。目論見書や販売用資料、広告、運用報告書など、投信のパンフレットやツール類も見直していく必要があります。
当研究所の特別研究員である藤沢久美さんはかつて、「正しく伝えることと、わかりやすく伝えることは違う」という名言を話しています。多くの金融機関はコンプライアンス(法令順守)の観点から「正しく伝えること」ばかりに注力して、「わかりやすく伝えること」をおろそかにしてきたようです。
投信をはじめとする金融商品は、家電や自動車などと違い、手にとって触ることができません。食品や衣料のように味わったり着たりできません。こうして目に見えない金融商品の特徴をわかりやすく伝えるためには、投資家のリテラシーに合わせて、「見える化」を図ることが大切でしょう。
(2010/10/15 掲載)