TICADVIの開催から見るアフリカビジネス最前線!
TICADVIケニアナイロビにて開催される
去る8月27日~28日の2日間、ケニアの首都ナイロビにて「第6回アフリカ開発会議(TICAD-TokyoInternational Conference on African Development)」が開催され、アフリカ35ヵ国の首脳級や国連開発計画(UNDP)、世界銀行(WB)、アフリカ連合委員会(AUC)のトップをはじめとして総勢約11,000人( イベント参加者を含める)、日本からも安倍晋三総理ご夫妻を含む3,000 人以上が参加した。TICADVI は伊勢志摩サミットと並び、今年の日本外交の二大イベントの一つとなる盛大なものであった。
ちなみに、筆者が理事長を務める特定非営利活動法人ミレニアム・プロミス・ジャパン(MPJ)も、ナイロビにてMPケニアと講演会を共催し、「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」の達成へのアプローチを世界に示すために設立されたモデル村(ミレニアム・ビレッジ)プロジェクトの成果につ いて説明した。その際、村のチームリーダーらがHIV 陽性の母親とHIV 陰性を保つ子供の2 組を率いて参加した。彼女達は日本の支援への感謝の辞を述べ、HIV に関する偏見が根強い地域における村人の意識変化をもたらしたことを含め、聴衆から高く評価された。http://millenniumpromise.jp
さて、今回のTICADVI はアフリカでの開催第一回目であり、ケニアのメディアでも大きく取り上げられた。現地の新聞“The Standard”によると、ケニアの有識者が日本の戦後の発展、技術、ビジネスマナー等に深く敬意を示し、TICADのキーワードである「パートナーシップ」「オーナー シップ」でも示されるように、援助から人材育成を含める投資を中心とした対等な協力関係を築く段階に移ったことを大いに歓迎していた。
アフリカでの日本企業の体制強化
また、アジアの大国・中国と日本との間で、アフリカ市場をめぐる競争拡大としての側面が強調されていた。中国の対アフリカ投資額は膨大で、2016年から3年間で600億ドルの投資(中国版TICAD と呼ばれる「中国・アフリカ開発フォーラム(FOCAC)」にて2015年12月発表}を宣言しているのに対して、日本は今回、今後の3年間で約300億ドルの投資を約束した。国際通貨基金(IMF)の統計では、2012年の時点で中国の対アフリカ貿易総額は約1364億ドルで日本(310億ドル)の4倍以上ということである。
新聞記事では、よく指摘されるように、中国の対アフリカ姿勢には、自国の発展に必要な資源を求め、労働力は中国人が占めるという国益を追求した側面が濃いとして批判する一方、日本の品質が高いことは認めながらも、コスト・パフォーマンスの面で高すぎるという政府幹部の苦言も記されていた。このような批判を受け、近年、中国政府は、企業に対して環境配慮や雇用内容等に考慮するなど社会的責任にも配慮することを促すようになっている。とはいえ、アフリカでは「パートナーシップ」「オーナーシップ」を重視してきた日本に対する信頼は厚い。
アフリカビジネスへの日本の関心が高まる
近年、アフリカは「最後のフロンティア」と呼ばれ、自然資源も豊富であり、2050年には世界の総人口97億2515万人の約4分の1がアフリカ人と予測され、中国をはじめとする各国が投資を拡大してきた。一方、治安が不安定でイスラム過激派等によるテロ事件も少なくなく、日本企業の進出 を阻んできた。そのような状況下における今回のTICADの特徴は、日本経済団体連合会の榊原定征会長を筆頭に70社もの日本企業リーダーが参加し、今後のビジネス面での連携・発展を印象付けたことである。
TICADVIの公式イベント「日本・アフリカビジネスコンファレンス」(経済産業省の後援下、JETRO・ケニア投資庁の共催)では、安倍総理大臣をはじめアフリカ各国代表、22の日本企業・団体の代表(豊田通商、日本電気(NEC)、日揮、三井物産、住友商事、丸紅、千代田化工、関西ペイント、日本郵船、北海道大学、長崎大学、JBIC、JETRO、JOGMEC、三菱商事、シスメックス、武田薬品工業、テルモ、三菱東京UFJ 銀行、三井住友銀行、みずほフィナンシャル・グループ、NEXI)、アフリカ20か国、6機関の代表が参加し、インフラ、資源・エネルギー、人材育成、セキュリティ、医療、食品、学術交 流など幅広い分野で合計73ものMOU が交わされた。
また、ケニア国際会議場(KICC)の敷地内に開催された「ジャパン・フェア」は盛況で、約100社・機関が参加し、インフラ整備、フードバリューチェーン構築、保健衛生など分野ごとの展示を通じて、アフリカのリーダーやTICADVI参加者に対して、日本の優れた技術、製品、サー ビスを紹介した。
筆者が感心したのは、みずほ情報総研がトヨタ自動車と提携して、ルワンダにて農業ベンチャーを支援し、ひまわりを栽培していたことである。実は、筆者は同研究所の方々とたまたまウガンダのミレニアム・ビレッジ、ルヒーラ村を訪れたことがある。「アフリカ視察の機会を無駄にせず、何か役立つビジネスを」と考えた結果が、この事業となったそうである。
https://www.mizuho-ir.co.jp/company/release/2016/globalagri0209.html
日本・アフリカビジネスコンファレンスについては、外務省HP 参照。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/afr/af2/page4_002288.html
ジャパン・フェアについては、JETRO のHP 参照。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2016/09/7457565ccd66a966.html
ケニアで普及する携帯電話での送・出金サービス
最後に、携帯電話による金融サービスについて触れたい。ケニアでは携帯電話会社のサファリ.コムが携帯電話で送金・出金、マイクロファイナンスサービスなども提供できるシステム(エムペサ) を発展させ、大成功を収めている。2013年にはすでにケニア国民の70%が利用し(その半分強は女性)、現金以外の取引の70%を占めた。実際、私も隣国ウガンダの首都から車で6時間も離れた地方都市Mbarara のホテルをチェックアウト後、請求額にミスがあったことに気づき、電話で何度もしつこく交渉したところ、「あなたの携帯へお金を戻す」と言われたことがある。
このように、アフリカ大陸では新旧のビジネスチャンスが埋もれている。日本政府の後押しもあり、資源やインフラ整備に限らず、あらゆる分野にて日本のビジネス界も本腰を入れて取り組み始めていると言えるだろう。
特定非営利活動法人ミレニアム・プロミス・ジャパン( 認定NPO 法人) 理事長。
Millennium Promise( ニューヨーク)理事、ISIS-WICCE ( ウガンダ) 理事。
1984年イギリス留学帰国後、1987年(株)電通総研(のちに電通に吸収合併) に入社、初代社長天谷直弘氏の秘書兼アシスタントを務める。2004年3月(株)電通を早期退職、同年4月国連日本政府代表部の次席代表に任命された夫・北岡伸一に同行して渡米、2006年9月帰国。200年、夫の北岡伸一とともにMPJを設立。これまで毎年数回サハラ砂漠以南のアフリカ諸国に設立されたミレニアム・ビレッジを中心にアフリカ13カ国を視察している。